第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
そんな 両親を思うと
顔向けが出来ずに
何があったかは詳しく話せなくて
差しさわりのない内容にした
手紙を一度だけ
実家に送った時があった
私が送った手紙が
差しさわりのない内容だったからか
それでも相手のお家に尽くすのが
お前の幸せだと
あんな良縁は他にないと言われて
耐えられる内は……と そう思って居たけど
そうして居る 内に
何が 幸せ なのか
その言葉の意味が 分からなくなってしまって
そんな内に母が倒れたと聞いて
彼にいとまを申し出たら
そんなものはお前には ないと言われて
それでもと頼んではみたものの
彼からの返答は変わらずに
1日 2日と経ってしまって
何としても 僅かでもと いとまをと
更に求めれば 手を上げられ
そうされながらも
いとまが叶わないのならばと
離縁を夫に 縋る様に頼み込んで
籍に泥を塗るような恥さらしと
罵られながらも
やっと離縁をして貰った…
やっとの思いで そうして貰って
晴れて家へ戻った時には
もう 母は……
帰らぬ人になっていて
私が酷く 疲れ果てていて
身体も着物の上からでも分かるほど
みすぼらしいまでに痩せこけて
化粧もせず
伸ばしざらした頭をしていたのを見て
その私の変わりようを見た父は
父は
何度も何度も
畳に頭を擦る様にして
すまなかったと繰り返し
私に謝って来たのを
忘れたくても忘れられなくて……
「いいの?こんな、私が、
幸せになっても…いいの?
だって、私とうも立ってるし、
子供だって…、産めないのに。それに…
自分の親の…、死に目にも…会えなくてっ…」
自分の数年分の後悔が
次から次に 目から涙となって零れて
「親不孝しか…、してないのにっ…ぅ…」
それが止まる 気配すらなくて
どんどんと 溢れるのを
止められない