第77章 ふたり 一人独り 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
杏寿郎は恐る恐る
自分の目の前の男にそれを訊いてみた
彼の立場からすれば
奏さんに頼まれてみくりを
見守っていたはずなのに
みくりは楽しく
大学生活を送って居ますよ と言う
嘘の報告をずっと
自分が雇った人間から恰も真実の様にして
聞かされ続けて来たんだから
だからこそ 自分がそれを知って
今度は信用のおける
専門の機関から冨岡を雇って
みくりと篠田の件を調べ上げさせて
表沙汰にすることなく
篠田大気だけを刑務所へ送ったのか
「前に雇っていた彼と違って、
冨岡君は優秀だったからね。
彼のお陰で、もうすぐ出所して来る
篠田大気も出所してすぐに
再逮捕が出来る手筈を整えてあるよ?」
そうか 冨岡は
会社の中では1年別の会社で働いていて
ヘッドハンティングで学年こそは
俺達より一つ上だが同期になったが
要するに 成瀬さんからの依頼で
俺達の大学で内部調査をしてたのか
「流石…、成瀬さんですね」
「僕の親友とも呼べる、友人の頼みだからね。
それに、僕自身にとっても妹の様な
存在なんだから、当然の事だと思うけどね?
まぁ、欲を言っていいなら、家を
建てようと思ってるなら中条市に
来たらどうかな?あそこは環境もいいし。
子育て世代が楽しめる場所も、
どんどん新しく出来て来るよ?
僕の仕事のフィールドは関西から、
日本全国には広げたいと思ってるけど」
フッと成瀬の言葉に杏寿郎が
口の端を曲げると
少し冷めて温くなって来た
焼酎のお湯割りを流し込んだ
「でも、良かったんですか?
俺に、全部を話してしまって」
「ああ。それかい?最初こそは君の事は
僕の可愛い妹を僕から奪い取った
忌々しい存在だとは思ってたけどね?」
月城さんから聞いた
月城奏と成瀬との出会いの話を思い出す
「君とLINEをしてる内に、君と言う
人物が僕の目に色眼鏡を通さずに
見えて来たってだけの話だよ。
奏君と言い、杏寿郎君と言い、
僕の妹はなかなかに男を見る目はあると
僕はそう思ってるんだけどね?違うかい?」
「とりあえず、今の所は
成瀬さんに好かれてると思う事にしますよ。
何分、貴方に嫌われると恐ろしい事になるのは
俺にも、理解ができましたのでね」
「嫌われる?何の事?僕には
思い当たる事はないけど。
僕を怒らせるのだけは止めた方がいいって事」