第77章 ふたり 一人独り 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
円形のバーカウンターの後ろには
海が見えるロケーションで
カウンターの向こうの
バーテンダーに食事の前に
触らない一杯をと注文すると
「そうでしたら、こちらをどうぞ」
こっちの思っていた通りに
キールが出て来て
白ワインをカシスリキュールで割った
食前酒として飲まれるカクテルだ
「キールか…、ありがとう」
「福岡の夜はお一人飲みで?」
「いや、連れが来るのを待ってるだけだ。
あっちはまだ仕事中らしくてね。
だからこうして、待ちぼうけをしてる。
と、言いたい所なんだが。
正直、会いたい様な会いたくない様な
複雑な心境でね」
「九州にはお仕事で?」
「ええ、研修が
九州にある支社でありまして。
九州も、今日で4日目になるが。
あっちに妻を待たせてるのでね、
正直、帰りたいばっかりだ…っと、
申し訳ない、つい愚痴を
漏らしてしまって居た様だ」
ひとりだから 成瀬さんが来るまでは
暇をつぶすしかないので
バーテンダーの彼に
付き合って貰ってる
「あんまり帰りたい帰りたいと
妻に言うと、怒られてしまうので。
妻には、帰りたいとは漏らせなくてね」
「はははは、ああ、すいません。
お客様を笑ってしまって。あまりにも
お客様が、お可愛らしい上に、
奥様がよっぽどお好きでいらっしゃる様だ。
待ち合わせとお聞きしましたが、お相手は
こっちの女性で無さそうで安心しました」
空になったグラスを置いて
「ギムレットを」
「はい、畏まりました」
ギムレットはジンとライムの
甘口ではあるが甘過ぎ無くて
男にも飲みやすいから
バーに行ったらよく頼むカクテルだ
「どうぞ、ギムレットです」
「どうも」
杏寿郎がグラスに口を付けて
その味を確かめると
「甘すぎない…な、美味い」
「ええ、お客様は甘くない口当たりの方が
お好みそうでしたので、100%の
無糖のライムジュースを使用しております」
そう言ってバーテンダーが
杏寿郎に対して小さく目を閉じて
会釈の代りにしてくる
「飲むばかりじゃなくて、軽く摘まみたいが。
チーズの盛り合わせでも、貰えるだろうか?」
それはここでは対応できないので
キッチンの方から提供されて来て
「それでは、チーズとご一緒に
ギムレットの小話でも如何でしょうか?」