第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
「良かった?俺は、貴方が俺の誘いを
快諾して下さって良かったと
感じてはおりますが。何か?」
本当は 聞きたかったのは
そうじゃなくて
祭りに一緒に行く相手が
私で 良かったのかと言う事で……
でも そんな風に 私が
その誘いを受けた事を
そんな風に 喜ばれてしまっては……
聞くに 聞けずで
「いいえ。何でもありません。
その、……楽しみにしています」
みくりがそう言葉を濁しつつも
はにかむ様にして言うと
一瞬その言葉を聞いて
杏寿郎が固まってしまって居たが
直ぐにいつもの調子を取り戻して
「俺も、……楽しみにしております。
みくりさん。その様な顔をされてしまっては。
多少なりと、
俺は期待してしまいそうではあるが……。
余り、俺には……
隙を見せすぎない方がいい。でないと……」
そう言いながらもこちらへ
背を向けて 店の戸に手を掛けると
ちらりと視線だけをこちらへ向けて
「……俺の様な、悪い男に
…付け入られてしまいますが?」
では とそのまま
小さく会釈して店を後にしてしまった
自分の顔が 赤くなってしまってるのを
自分でも感じて
みくりが自分の両方の頬を手で押さえると
そのまま その場にしゃがみこんで
やだやだやだ 何?
何だった?今のっ
ズルいっ ズルいってもんじゃない
「あんな顔するのは、…ズルすぎるっ…」
はぁーーっと大きなため息をついて
自分の胸に手を当てて
騒がしい心臓の高鳴りを押さえようとする
やだやだ 何なの?
なんで こんなに胸が騒がしいの?
ドキドキしてしまうの?
だって ズルいっ
あんな爽やかに
厭らしさのひとつもなく
あんな風に
下心あるって宣言するとか…
ズルいですよ 煉獄さんっ
年下なのにっ… 6つも
「ズルい人……」
自分の唇に手を添えながら
みくりがそう漏らした