第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
「しばらく、遠方での仕事を
しておりましたので。何の知らせもなく、
申し訳なかったのですが。
みくりさんに、ご心配をして頂けるとは…。
足しげく、通った甲斐があったと言う物だ」
「あっ、あの、心配の意味合いが
…違って居る様にあるのですが…、
気のせいでしょうか?
えっと、今日は何に、なさいますか?」
自分の身を案じて心配してくれたのかと
そんな顔をして喜ばれてしまっては…
こっちは只
いつも 見てる顔が
しばらく見てなくて
気になってた…だけなのに
そんな深い意味が あってじゃないのに…
決まりの悪そうにみくりが
杏寿郎から視線を逸らせようとしたが
「みくりさん」
名前を呼ばれて
彼から逸らそうとしていた
視線を引き戻されて
彼の顔を改めて見ると
その顔からは疲労の色が見える
声にも普段の様な張りがなくて
家に戻るよりも先に
うちに来てくれた…と言う事なのだろうか?
「もしの話ではあるのですが、
差支えがなければ。…貴方の三日後の夜の
予定を、お聞きしたい。もし、ご予定がなくて、
貴方のお許しが頂けるのであれば、
俺の為に…お時間を作って頂きたいのだが…」
三日後と言うと
丁度 24日盆の祭りの日だけど……
え?それって… もしかして…
「先約が、……おありだっただろうか?」
そう 心なしかシュンとした様に
しながら残念そうに言われてしまうと
いや 実際に お誘いこそはあったには
あったのだが… 全て断って居たので
私は その日は空いているのだから
それに 私は何してるんだろ?
現に 今目の前に 煉獄さんが居て
私の事を 誘ってくれていると言うのに
「いえ、その日は
……予定は特に、ありませんが」
先程まで 少しばかり
疲れが見て取れていた彼の表情が
ぱっと明るくなる
「本当ですか?仕事が長引いてしまって、
お誘いをする事も叶わないままで、
今日になってしまった。
もう、貴方の事だから、先約が
おありだろうと思っていたので…。良かった」