第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
それから……
一週間が経ったが
彼は店に顔を出す事がなく
誘われる事も 誘う事も叶わない
そんな日が続いていた
他の常連客から
一緒に祭りに行かないか?と
そう誘われはしたが
嘘をついて
先約があるのでとお断りをした
先約も何も
約束すらもしていないのに
みくりは内心 心苦しくもあったが……
誘って貰えるかも
それすらも分からないのに
もしかしたら
彼には他にいい人がいて
そんな約束をとっくの昔に
取り交わしているのかも
知れないのに…
なのに
そうして貰えるんじゃないかって
そう 内心
どこか期待をしてしまっている
そんな 自分が居るのも確かで……
あり得ないと 否定する自分も居て
でも 彼が
煉獄さんが 一週間まるまる
顔を出さないなんて…今までなかった
何か……あったのだろうか?
「今日は、もう……終おうかしら?」
夜も更けて来て
そろそろ店を畳もうかと
みくりが暖簾を下ろして
店に入った時
ガラガラと 店の戸が開いて
そこには いつ来るのだろうと
私がここの所思って居た その人である
煉獄さんが 立っていた
服装はいつもの炎の羽織に
バンカラの様なあの服装なのだが
明らかに服が泥で汚れていて
その顔には大きな絆創膏が貼られていた
心なしか……
表情も疲れているようにあるし
他にも怪我をしているのか
その左手の手首から包帯が
巻かれているのがちらりと見えた
「仕事の帰りに、治療を受けていたら
遅くなってしまったんだが……、
もう店仕舞いでしたか?」
みくりがその手に
暖簾を持っていたのを見て
そう杏寿郎が声を掛けて来た
いいえとみくりが首を横に振ると
その手に持っていた暖簾を
もう元の位置に 一度掛け直す
「まだ、やっておりますよ。煉獄さん。
しばらく、お足が遠のいておられたので。
他にご贔屓が出来たのかと、
心配しておりました。どうぞ?」