第76章 ふたり 一人独り 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
はぁと杏寿郎がため息交じりに
「でも、しばらく離れるので…。
俺としては、もう少し…とは
思ってたのですが。っと、博多には
16時半ぐらいには着きそうですかね?」
「何?奥さんがちゃんと
起きれたか気になるとか?
デッキだったら、通話できるから、
気になるなら電話して来てもいいぞ?」
「すいません、そうさせて貰います」
携帯電話での通話は
座席では出来ないが
車両の端のデッキでなら出来るから
杏寿郎がみくりに連絡をしようと
隣に座っていた木崎に頭を下げて
自分の席から立ち上がると
デッキへと移動する
LINEを起動してメッセージを確認する
みくりには
新幹線に乗った時に送ったが
まだ既読になっていないから
寝ているのかも知れないしな
LINEからトークルームを開いて
音声通話であの呼び出し音を聞いていると
何度目かの呼び出し音の後に
みくりが電話に出て
「みくり、その、身体は
大丈夫そうか?出る時に何も言わずに
俺が家を出たから、君が
怒ってるんじゃないかって心配してたんだがな」
『杏寿郎は、心配し過ぎ、ちょっと前に
起きて、シーツの洗濯してる所。
今から、夕飯の買い物に行こうかなって
考えてた所だったからさ、杏寿郎は?
LINE、してくれてたの返してなかったから?
心配して電話して来てくれたの?』
アパートを出る時に
みくりに声を掛けて起こさなかったのは
行かないでって言われてしまったら
本気で行きたくないとこっちが
言ってしまいそうだったからだ
寂しそうな顔を見せられてしまったら
もう5分だけを繰り返して
家を出る決心がいつまでも出来そうになくなる
自信しか無かったからな 正直
『杏寿郎、今は、新幹線の中なんでしょ?
今はどの辺り?』
「そうだな、ちょっと前に
広島は過ぎたから、もうちょっとしたら
山口に差し掛かる辺りだな」
窓の外の景色に目を向けると言っても
新幹線なのだから
景色は流れる様に過ぎて行くだけなのだが
『山口か、山口と言えば下関のフグだよね。
あ、でも、木崎先輩と一緒なんでしょ?
私と電話してて、大丈夫なの?』
「ああ、何も言わずに出て来てしまった事と、
君からのLINEの返事が無かったのが気になってな。
みくり、また、夜に電話してもいいか?」