第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
そう一方的に言うと
そのまま今度こそは店の奥へ引っ込んで行って
「何だ、…バッチリ
気になってんじゃないのさ。
相変わらず、
素直じゃない子だねぇ。あの子は…」
目を瞬かせながらトキがそう言い漏らした
店の奥の和室に置いてある
鏡台の前に座って みくりが
汗で崩れてしまった化粧を直す
「一途な男…か、でも、…若すぎるよ、
釣り合いが取れなさすぎるし……」
そう漏らすように言うとみくりは
はぁっと深いため息をついた
鏡に映る
自分顔…を見つめて
26と言う年齢よりは
幾分は若くは見られるが…
それでも 彼より……
年若く見られるのは難しいだろう
3日前に彼からされた 求婚の言葉を思い出す
ー「貴方は先程、もう26と言われたが。
まだ26、まだまだ、先は長い。みくりさん、
これからの人生を
俺と共に過ごしては頂けないだろうか?」ー
どうにも 私には
残りの自分の人生を 彼の隣で過ごすと言う
その姿の想像が 到底付きそうになくて
気温が上がって来る前に
店の軒下に置いている
朝顔に水をやっておこうと
みくりが表に出ると
今朝も店の軒下の朝顔は
白い大輪の花を咲かせていた
まぁ この花も
夕方なる頃には萎んでしまうのだが
そっとみくりがその白い朝顔の花に
手をそえるとその花を眺める
「青や、桃色もいいが…、白もまた…
違った美しさがあって良いものですね。
清楚であって、それでいて可憐だ。
だが…、その花の美しさも
貴方の前では
霞んでしまいそうではありますが、
今朝はまだ早かっただろうか?」
そろそろ 来る頃合いかと
思って居たけど
本当に来るなんて
「いえ、煉獄さん。丁度今、店の
暖簾を出しに出て来た所でしたので……」
「そうでしたか。
ならば、一番乗りと言う事か」
みくりが店の暖簾を掛けると
どうぞと中に入る様に杏寿郎に促した