第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
「でも、この店は…、父さんが
遺してくれた物だから……。
私に、代替わりしても
その味を求めて来てくれる人が居る内は
……ここを守りたいと思ってるの」
そう言って みくりが目を細めた
トキ叔母さんは自分に何かあったら
私がそれこそ 一人になってしまうのを
心配してくれてるんだろうけども……
「ああ、そう言えば。
あの煉獄さん所の坊ちゃんは
まだ、アンタに求婚しに来てんのかい?」
彼の家
煉獄家はこの辺りでも
かなり立派なお屋敷で
名家なのだと言う事は
有名な話でみくり自身も知ってはいるが
「3日ほど前も…、来てたけど?」
「また、求婚されたのかい?」
トキの問いかけにみくりが
そうだと頷いた
「煉獄さん家の坊ちゃんも、何と言うか、
変わった色の髪してるけど。風変りと言うか。
物好きなこったねぇ。名家の坊ちゃんが、
アンタみたいな年増の石女に
ずっと求婚してくるたぁねぇ」
彼の家の家業は
実際に何をして居るのかの詳細を
知っている者はおらず
変わった職業だと聞いた事がある
あの立派なお屋敷を維持できるのは
その家業のお陰だとも
ますます
怪しい仕事に思えて仕方ないが
バンカラにも見えない事もない様な
変わった服装をしているし
その上
その腰には刀を差しているし
包帯だらけの姿で歩いて帰ろうとしているのを
見かけた事があったから
夜に家を留守にする事も多く
仕事に出かけると数日家を空けて居る様で
とすると
仕事から帰って来た時にうちに来てる訳か
代々家業としてその職業をしていると
前に彼本人から聞いた事があったが
一体
彼はどんな仕事をしているのだろうか?
「物好き……ねぇ、
確かにそうね…変わった人」
「ははは、まぁ、あんな頭の色してんだ
女の好みも変わってんだろうーさ。
随分熱心に足しげく、通ってんだろ?
ねぇ、受けてやったら?」
じとっとした視線を
みくりがトキに向けた