第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
私に会いに来る為の
口実…まさかね?
一瞬浮かんだ考えを
首を軽く振って否定する
でも……
店に来る客の中には
彼だけでなくて
私が石女なのも
その上に
年増なのも承知の上で
後妻にならないか?…と
言う話を持ち掛けられるのなら
たまにあるにはあるのだが
しかし彼はそうではなくて
まだ 年も若く
何を好き好んで
…私を娶りたいと言うのだろうか?
後 毎回凄い量の惣菜を買って帰るけど
家族が沢山居るのかしら?
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それから3日が経って
その日も朝から
日差しが照り付ける
うだるような暑さだったが
みくりはいつも通り
開店の準備の為に
店の奥の厨房で惣菜の仕込みをしていた
「はい、みくりちゃん。こっちは済んだよ」
「あ。すいません、トキ叔母さん。
いつも、手伝って貰っちゃって」
私には両親が居ない
亡くなった父の妹の
私からすれば叔母さんである
トキさんが
こうして時折 店の仕込みや
店番の手伝いに来てくれる
年増であるとは言えども
女一人の暮らしなので
あれやこれやと気を遣ってくれている
まぁ 時々見合い話みたいなのを
持って来るのは
正直な所 やめて欲しいんだけどもね?
少々お節介な所があるが
気のいい叔母さんだ
トキが下処理をしてくれた野菜を
調理に向いた大きさに切って行くと
鍋にそれを入れて 火にかけた
「みくりちゃん、……もうそろそろ。
アンタもさ、自分の幸せを考えても
いいんじゃないかい?みくりちゃんが、
兄さんの店を大事にしてくれんのはさ。
私だって、妹としてありがたいと
思ってはいるんだよ?けどもさ」
ああ またトキ叔母さんの話が
始まったとみくりは思った
「でも、私はもう、こんな歳ですし?
それに子供も望めない身体ですから……」
「こんな小さな惣菜屋なんて、畳んでさぁ。
どっかの後妻にでも何でもなってさ、
落ち着いて楽な暮らししても……。
兄さんだって、その方が……」