第75章 ふたり 一人独り 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
そう ファイナルアンサーとでも
言いたげにして答えを
杏寿郎が確認して来ると
私が動画を観ながら
レシピを検索したりできる様に
キッチンに置いている
アームの付いたスマホスタンドに
持っていたスマホをセットして
「今回だけなら、良いだろう?
6日も君から離れる俺を…憐れんでくれても」
そのスタンドのスマホが動画を
撮ってるんだって気が付いて
「やっ、お願い…、撮るのだけは…止めてッ!」
その尋常でない様子で彼女が
しているのを撮るのを拒否して来るから
今までも持ち掛けては断られてた
その本当の理由も…この反応と
表情を見れば 分かる
大凡 撮影した動画を流すとでも
言われて脅されてたんだろうが
ありがちな手口でありながら
悪質で卑劣な手口でもある
杏寿郎が何も言わずに
動画モードを終了させてアプリを終了させると
スタンドから自分のスマホを外して
ギュウッと後ろから
痛い位に抱き締められてしまっていた
「なぁ、みくり」
「…??」
「身体…、俺の方に向けてくれないか?
後ろからじゃなくて、前からがいいんだが」
前から抱きしめたいと
杏寿郎が言って来て
スルッと腕の力が緩んだから
恐る恐るに彼の方に自分の身体を
向き直ると 杏寿郎の手が頬に触れて来て
「キス…してもいいか?」
「うん?いいけど…」
ちゅ…と触れるだけのキスをして来て
ぎゅっと今度は正面から
杏寿郎に抱き締められてしまっていて
「もっと、キスしても…いいか?」
「う…ん、いいよ…」
ひとつ ひとつの事に
こっちの意思を確認して来るから
彼はある程度の事がさっきので
分ったから だからこんな風に
壊れ物に触れるみたいにして
私に触れてくれる…の?
知らない間に 目から次々と
そんなつもりもなく流れる涙を
放っておいてくれたらいいのに
拾わなくていいのに
その 溢れる 涙の
一滴 一滴…を
彼が掬って 拾い上げてくれて
そうされる度に 胸が苦しくなって
余計に流れて止められない…
「…いいよ、杏寿郎、そんな事…しなくても」
「今までは聞いても、何も
話してくれなかっただろう?俺に。
こんな風に、俺の前であの時の事で
泣いてもくれなかっただろう?」
その雫を 自分の唇で拾うと
彼女の流した涙の味がした
「杏寿郎…?」