第19章 惣菜屋さんと煉獄さん 前編 お相手:煉獄杏寿郎
それも まぁ
彼がうちに来る度になのだが
私は彼に 求婚されている
それも日常的にだ
けど
26の出戻りの石女に求婚する意味が
彼にはあるのだろうか?
彼が何が良くて私に
そうしてるのかが
私には理解が出来ずにいた
事の始まりは
2年前 父が急死して
この店を急遽 私が継ぐ事になり
嫁ぎ先から離縁されて
実家へ戻ってから
ここでの仕事の手伝いはしていたから
父がしていた仕事の流れも
見ていたので ある程度は知っていた
生前の父が
遺してくれていた手記を頼りに
父が作っていた惣菜の
味の再現をしていたのだが
その秋に ご近所の人に続けて
さつまいもを沢山貰ったのもあり
大量のさつまいもを持て余してしまって
ひとりでは食べきれないなぁと
思って居た時に
どうせだったらと
父の手記にはなかった
さつまいもきんとんを作って
店に並べた所
丁度 いつもの様に買い物に来ていた
彼 煉獄さんが
それを見つけて
さつまいもきんとんを全て
買い占める形で
今日の様に買って帰って
その次の日に 店に来るや否や
店内に響き渡る……所か
近所中に聞こえる様な
大声で求婚されたのが始まりだ
「あの、煉獄さん…私は、何度も」
「みなまで言わずとも、結構。
また、返事は後日、頂戴しに参ります」
「え?そうなのであれば……尚更」
「俺は、今は結構だと……
言っているのですが?」
どうして 返事が分かり切っているのに
彼はそうするのか それも何度も
それから今日まで
(現に今日もではあるのだが)
私に何度も求婚しては
それを私に断られているのだが
それでも 全く気に留めた様子もなく
毎週の様に
(週に2回の時もあるが)
店に現れては
挨拶の様に求婚していくのだ
断られるのも 彼にとっては
前提であるのにも 関わらず…にだ
なら どうして彼は
断られるだけの求婚を
何度も性懲りもなく するのかと……
疑問に思わずには居られないのだが