第75章 ふたり 一人独り 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
どうせ そんな事を
約束みたいにして言わなくても
明日には杏寿郎は研修に前乗り泊で
出てしまうんだから…
今夜はその 文字通りに
寝かせて貰え…ないんじゃないかとか
そんな事を考えたりもしていて
アイスを食べ終わって
本館の中を見て回る
ここしか見る場所は無いのだから
回るにはそんなに時間は掛からない
だから 普段だったら
水槽の中を流し見する程度の見方しかしないが
その水槽のひとつひとつを眺めて
水槽の隣の説明のパネルに目を通した
「まだ、来年の5月までには
時間があるからな、また来てもいいがな」
私が惜しむように見ていたからなのか
杏寿郎がそう声を掛けて来て
そのまま手を取られると
ぎゅっと握って繋がれてしまう
「杏寿郎…、うん、そうだね。
アクアトピアもいいけど、
こっちにもまたそれまでに来たい…ね」
「あっちも、あっちで思い出深いだろう?
結婚式したんだからな。あそこで」
そうアクアトピアの事を
杏寿郎が引きあいに出して来て
その杏寿郎の言葉に
アクアトピアでした結婚式の事を思い出す
館長さんに年間パスポートを頂いたので
あの後 アクアトピアには
何度か足を運んでいた
『ママ~、パパ~、こっちこっちッ』
バタバタと騒がしい足音が
こっちに近づいて来て
水槽の前を次から次に走って行く
小さな子供をその子の両親が追いかけていた
みくりのすぐ隣を
駆け抜けていくと
その子の両親がこちらに謝りながら
何度も頭を下げつつ その子を
追いかけて行って捕まえると
その子のお父さんが自分の肩の上に
その子を肩車すると
遅れて追いついて来たお母さんと
自然に手を繋いで歩き始めたので
みくりがその3人の後ろ姿を
しばらく何も言わずに
目の前の水槽も見ずに眺めていて
視線を今度は杏寿郎の方へと
向けて来ると 杏寿郎の顔を見て来て
「色んな所行きたいね、2人で…でもだし。
その、子供と一緒に。あんな風に…」
「いいな」
「…うん、そうだね」
少し離れた位置にもう行って居る
さっきの親子連れの背中を
杏寿郎が眺めていて
その目を細めて居るのが見えたから
繋いでいた手をぎゅっと握ると
杏寿郎が握り返して来てくれて
今は… 私と杏寿郎の
2人だけで
夫婦…でしかないけど
※ページ内加筆しました