第75章 ふたり 一人独り 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
「杏寿郎が…、話して欲しいって言う度に。
杏寿郎には、知られた…くないし。
話したくないって思っちゃうから。
話さなくていいなら、話したくない…」
話したくないが
彼女の本音なのだろうから
頑なに口を割らなかった
みくりが話をしたのは
俺が彼の名前を知って居たから…か
割と何でも明け透けな彼女が
話したくないと言うそれが
何なのか知りたいと言う
面白半分の興味本位で
俺もそれを聞き出そうとしてる訳ではないが
そうそれをみくりに拒まれる度に
自分を拒絶されている様な
信用に値しないと言われている様な
そんな感情を憶えてしまうから
「……みくり」
「…杏寿郎…、私は…ッ」
「君の俺への愛情を疑ってる訳じゃないんだ、
俺の君への愛情も、揺らぐ物の様に
疑って欲しくは無いんだがな?」
ギュウウっと強く抱きしめられてしまって
正直苦しいんだけども
「杏寿郎、苦しいんだけどッ」
すれ違ってる 自覚は
私の中にも杏寿郎の中にもあったから
ずれて行く様な気がしてる
お互いの感情が知れば知ろうとするほど
噛み合ってない感じがして
抱きしめられてるのに
彼を遠く感じるのは
お互いの中にある遠慮の所為なのだろう
そのずれを感じながら
身体を重ねるのが怖いと感じて居て
埋まる所か 余計にずれて行きそうな
そんな風に感じて居るのが
表情にも態度にも出て居たのか
このまま 彼に抱かれたとしても
何もしないで眠ったとしても
どっちにしても ずれる…のかと
私がそれを彼に話さないのが
その原因なのなら…
話してしまえばいいのかもって
でも私が あの時の事を
洗いざらいに全て彼に話した所で
話してない今よりも
話す方がもっとずれる気がする
「みくり…」
「杏寿郎…。
杏寿郎が居てくれたらいいの」
浜名湖での夜に
一緒に居たいと言ってくれた
あの時の言葉と似て居ながらに
全く違う意味に聞こえて来て
「みくり、俺の傍に居てくれないか?」
時折 消え入りそうな程に
不意にどこかへ行ってしまいそうな
そんな儚さにも似た様な印象を
みくりから感じて居て
「杏寿郎が…、
そう言うなら…ここに居る」
みくりの身体を
自分の方へ向き直させると
そのまま唇を覆う様に塞いだ