第75章 ふたり 一人独り 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
その音で杏寿郎が戻って来たのが分かって
みくりが嬉しそうな顔をして
玄関まで出迎えに来て
「お帰り。杏寿郎!
ねぇねぇ!杏寿郎、聞いて聞いて!
来月に引っ越すでしょ?あのお家に。
そうしたらね、七輪買うつもりなんだけどね?」
「あ、ああ。ただいま。
七輪でサンマ焼いて食べるって言ってたな」
「アレ、買おうと思って」
「いや、俺と君とは夫婦だが
流石にアレだけでは……」
みくりのテンションが上がってるのは
杏寿郎にも分かるが何が彼女を
そうせているかまでは わからないのだが
「七輪の上にね、乗せて
焼き芋作れる、石入れる鍋あるでしょ?
杏寿郎、焼き芋好きでしょ?
あれで焼いたら美味しい石焼芋が
お家でも食べられるよ。おじさんがね、
送ってくれたサツマイモもね、
その頃には食べ頃になるからね?」
見る?とみくりが
杏寿郎に手招きをして
発泡スチロールの中を手で探ると
もみ殻の中からサツマイモを見せて来るから
「ね、楽しみだね。私はあんまり
本体には興味ないんだけどもね?
足が早い食材だからさ、気を付けてても
すぐに傷んじゃうんだけどね?」
そう言って冷蔵庫の中から
あるものを取り出して見せて来るから
「それは?」
「ああ、これ?これは、私の
秋の楽しみだよ。本体よりもこっちが好き。
サツマイモの茎を煮たやつだよ。
きゃらぶきの柔らかくて
甘いやつみたいな感じかな?
でもね、ちゃんと茎もサツマイモの
味がするんだよ。食べてみる?」
みくりはサツマイモ本体よりも
サツマイモの茎の方が好きだと言って来て
甘く味付けをして煮て食べるらしい
「戦時中…のイメージなんだが…」
「ええっ、そんな事ないよ。
サツマイモの茎の煮たやつ
お弁当に入ってたら嬉しいもん」
秋の味覚が満載のテーブルの中でも
サツマイモの茎の煮物は
異彩さを放っているのは 言ってはダメなのか
「秋のご馳走…だな」
「秋っぽいビールあるよ、秋味」
鮮やかな紅葉の色合いが
秋を感じさせる キリンの秋のビールを
みくりがテーブルの所まで持って来て
ピルスナーグラスを杏寿郎が
食器棚から取り出すと
そのビールを黄金比率で注いでくれて
チンとグラスを合わせると
グイっと中のビールを喉に流し込む
「夏も美味いが、秋も美味いな!」