第73章 残りの結婚休暇の使い方 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
彼女の食べ物の趣向にかなり
彼は精通している感じだったから
俺の知らない彼女を
彼は知っているんだろうとか
かなり高級な店にも連れて行ったりとか
してたんじゃないかとか
そんな事をどこか頭の隅で考えてしまっていて
あの時はみくりに
八つ当たりの様にして
ワインを1本空けさせてしまったからな
いや お陰で…その後…と
浜名湖に来た 最初の
夜の事を思い出してしまいつつも
「だが。俺の奥さんも、
ちゃんと俺の好みのビールの味を
理解して知って居てくれているもんな」
「何言ってるの?当たり前じゃん。
私は、杏寿郎の奥さんなんだよ?
それに、杏寿郎だって、ちゃんと
私の好み…知ってて憶えててくれてるでしょ?」
「…ん、それは…まぁ、
奥さんが、喜んでくれる顔が俺も見たいしな」
細い薪の火が 太い薪に
パチパチと音を立てつつ 燃え移って行く
随分と日が落ちる時間が
早くなって来てしまったから
夜の闇の中の方が
揺れながら燃える炎が美しく見えるし
こんな風に 篝火の様に燃える炎を
俺が奥さんと眺めたいと思うのは
あの時の俺があの時の彼女と
そうすることが出来なかったから…なのかもな
一瞬 目の前の旦那さんが
燃え始めた焚火の炎を静かに眺めながら
どこか物悲しそうな表情を浮かべたと思うと
そのまま目を閉じて ふぅーっと
肩をすくめながら 長く息を吐き出して
「みくり、そのまま…聞いてくれ」
「杏寿郎?」
「俺は時々…、考えてしまうんだ。
あの頃の俺達の生きていた世界と、
今の俺達が生きている世界が
余りにも違いすぎる…ってな。
そう、たった100年ほどしか違わない。
その100年ちょっと違うだけなのに…ってな」
「でも、その時代があったから
今がこの形であるんじゃないの?」
俺も彼女も 鬼殺隊の永きに渡った
鬼との戦いの最後を知らない
あの頃の 俺の生き方を
彼女の最期を不幸だったと思うつもりはない
俺のあの頃の生き方も 選んだ最期にも
あの時の俺には 一遍の悔いも無かったから
自分で 選んで 生きて
生きて 生きた その結果でしかなくて
俺がそんな生き方を選んだ様に
あの時の彼女も
そんな生き方を選んだだけなのだから
そう それだけ
ただ それだけなんだ
必死に生きて 生き抜いた結果