第72章 残りの結婚休暇の使い方 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
パチパチと薪の燃える音と
ゆらゆらと揺らぐ炎と
虫の声を愉しむ時間
隣には 奥さんがいて
その横顔が焚き火の炎で
赤く照らされている
「観篝…」
その揺らぐ焚火の炎を見ながら
杏寿郎がそう呟くように言って
「かん…かがり?何それ?」
聞きなれない言葉に
みくりが杏寿郎に聞き返して来て
「千寿郎…、弟が言って居た話なんだがな。
代々、炎柱をしていた煉獄家に
伝わる習わし…なんだろうが。
煉獄家では、懐妊すると7日毎に
2時間、篝火を見る…と言う
習わしの様な物があったらしくてな」
「えええっ?妊娠中に火事を見ちゃダメって
良く言うじゃない?痣が赤ちゃんに
出来るからって、言うよね??」
みくりが燃えている
焚火の炎を指差して言うと
「ああ。この煉獄家に代々伝わる
髪の色を伝える為が目的らしいが。
その儀式をしてないにも関わらずに
父さんも、俺も弟もこの髪の色だからな」
そう言いながら
杏寿郎が自分の指に
クルクルと自分の髪を巻き付ける
「それはそうだよ、遺伝子で
髪の色や肌の色や目の色が決まるのに。
そんなことしても、髪の色なんて
変わらないじゃない?」
そんな話をしていると
柵の外について居る
インターフォンが鳴って
棒パンとマシュマロとお酒が届けられて
杏寿郎がこちらに1本
生地が巻き付けてある
棒を差し出して来るから
その生地が焦げない様にしながら
焚火にかざして パンを焼いて行く
「私ね、このパンが焼けるのを
待ってる、時間好きかも」
「そうだな、俺も嫌いじゃないぞ?案外」
ふふふふとみくりが嬉しそうに笑って
「じゃあさ、どっちが綺麗に
均一なきつね色に焼けるか
勝負しようよ」
「どんな、勝負だそれは?まぁ、
勝負と聞いたら受けて立つしか無いが」
こうしてどっちが棒パンを
綺麗に焼けるのか勝負が始まったのだが
トンと杏寿郎の身体に
みくりが身体を預けて来て
「何だ?妨害もありなのか?」
「邪魔してません~、
杏寿郎の肩にもたれてるだけだも~ん」
「じゃあ、キスするだけ~とかもアリか?」
「パン焦がすよ?」
「ちょっとだけなら、焦げない」
パンを焼いていたはずなのに
気が付いたらキスばっかりに
なっちゃいそうだなぁって
そんな事を思いながら
「みくり」