第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
ぎゅっと俺を求めて
彼女に縋りつかれる
柔らかくて温かい
女の人の身体……
普段ならこうされてしまったら
俺はもう
どうしようもなくなってるだろうけど
「私とじゃ、…出来ない?
だったら、いいよ?呼んでも…」
美空の言ったその言葉に
俺は彼女に対して
失礼なことをしてるんだと
そう気が付いた
「美空……」
目の前に居る 青い瞳をした
彼女をそう呼んで
その唇に自分の唇を重ねる
身体を硬くするその仕草は
みくりさんとは異なる反応で
男を…知らない 女の子の反応だった
無理やり 乱暴されて
そのまま 男の欲望のままに
いいようにされるだけされて
殺されて 散った
彼女の夢や そんな物があったことも
あの男達は知らなくて
その命すらも 踏み躙ったんだ……
許される物じゃない
許されていい事じゃない
炭治郎だから そうして欲しい
そう言った身体は震えていて
怖いと思ってるんだろう
恐怖の匂いがする
「怖いのなら、無理には……」
「いいの、炭治郎が、怖いんじゃないっ
炭治郎は、違うから」
きっと彼女が怯えているのは
あの日の記憶
ギュッと身体を包むようにして
抱きしめられる
炭治郎……優しい
炭治郎が 好きだって
私がいくら 思っても
炭治郎は あの人の 物なのに
自分の胸の辺りがズキズキと痛むのは
これは この痛みは私じゃなくて
あの人の痛みで
炭治郎に私とこうしてってお願いした事に
対する罪悪感と
私と彼がそうしてる事に対しての
不安とか嫉妬とか悲しみとか
色んな感情が混じっていて
苦しい……
だったら どうして
いいって 言ったの?
炭治郎にこんな お願いをしたの?