第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
明かりを灯さない
暗い 闇が支配する部屋に
荒い呼吸が混じり合う
闇に目が慣れて来て
じっと注意深く
みくりさんの顔を見ると
右と左で瞳の色が違う……
どっちなんだろう?今は……
どっちも と言う事なのだろうか?
混じってるのは瞳の色だけじゃなくて
彼女からする匂いも
ふたつの匂いが重なって混じってる
一度に二人の女性と
そう言う事をしてるみたいな
そんな錯覚にも陥りそうだ
お互いの舌と舌を求めあって
絡め合うと
その唇の隙間から
吐息と共に甘い声が漏れる
「「……んっ、はぁ、ん、ふっ…」」
ますます 俺は混乱してしまいそうだ
声も重なって聞こえるからだ
でも 隠しきれない
悲しみの匂いが混じってる
この悲しみの匂いは
どっちのだろう……
そっと炭治郎が彼女の頭を撫でる
「無理……しなくても、いいと俺は思う。
止めておくのなら、…ここで」
「炭治郎ぉ、……止めないで」
「止めなくて、いいからっ、続けて」
俺の問いかけに別々の返事が返って来た
ギュッとみくりが瞼を閉じると
「私に、変な気を遣わなくていいから!!」
そうみくりさんが言い放つと
匂いが変わったのを感じて
みくりさんじゃなくて
今の彼女は 美空 なのだと
炭治郎には 分かった
「後悔……、しないのか?美空は」
「後悔してるのは、炭治郎じゃないの?」
後悔してるのか
俺は そうする前から
それを了承した自分に後悔してるのか
「でも、俺が断ったら……」
「みくりさんが、悲しむから?」
当然だよな
俺とみくりさんの 会話はみんな
美空には聞こえるだろうから
「こんな事、良くないんじゃないかって」
「炭治郎、らしいね。でも……、そんな
優しい、炭治郎だから…そうして欲しい」
どうしてだろう 顔も
身体も あの人なのに
俺の好きな あの人なのに