第70章 秘密の個人授業 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ高校生
そこまで人は多く無いが
人の波を掻き分けながら
三柴を探して大通りを歩く
「大通りよりも、裏通りの方も
探した方が良いかもな?
三柴は方向音痴だから
単に道に迷ってるんならいいが…」
「大通りは、新田達と錆兎に
任せて、俺と先生で裏通りを探しますか?」
「ああ。そうだな、新田にLINEをして
あっちは新田達に任せよう」
そう言って祭りの喧騒から離れた
裏通りに足を踏み込んで
提灯もない街灯の明かりだけを頼りに
裏通りを進んで行く
夏に浴衣なんて
普段なら暑くて堪らないだろうが
妙に胸の辺りがザワザワとして落ち着かない
「この辺りにも居なさそうだな」
「宇髄が祭りの本部に、呼び出しの
放送をして貰いに行ってくれてるそうです」
会場のあちらこちらに設置してある
スピーカーから 三柴を本部のある
小学校の方へ呼び出す放送があって
「ああ、放送…これに三柴が…って
先生?どうかしましたか?」
「今、声が聞こえた気がする三柴の」
こんな裏通りのシャッター街で
ひとりで三柴が何をして居るのかと
煉獄は疑問に感じるが
その声が聞こえたと言う方向に
ズンズンと進んで行く
みくりの後を追いかける
「煉獄、宇髄達とは合流出来るか?
いいか、良く聞け煉獄。決してお前は
ひとりでは来るな。そっちに
駐在所があるだろ?そこに駐在さんが
居れば一緒に宇髄達が揃ってから来い」
「せ、先生は?」
「私か?私は時間稼ぎだ…いや、
違うな、生徒指導…だな」
「だったら一緒にッ、俺も行きます」
「いや、来るな。
連絡出来る動ける人間がいる方がいい。
煉獄、なるべく早く、頼むぞ?」
そのみくりの言葉に
煉獄が頷いてここからほど近い
駐在所に向かって走り出した
随分と祭りの中心地からは離れている
ここは古い商店街だから
店ばかりで家も無い
多少大声を出しても
もうすぐ花火もうち上がればかき消される
車にでも乗せられると厄介だな
物陰に身を隠しながら
三柴の声が聞こえた方に目を凝らしつつ
自分の耳に意識を集中する
「あの~、本当にこっちなんですか?」
聞こえた三柴の声だ
『こっちこっち、可哀そうに。
ちゃんと俺達が連れてってあげるからさ』
『そうそう、こっちこっち』
『ののかちゃんって、彼氏いないって本当?』
「彼氏は…居ません」