第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
当然に その家の娘であるアイツにも
聞いてる方が気分が悪くなる様な
そんな仕事をさせていたらしく
そんな算段をしていたのを
この耳の所為で 聞いてしまって
親も何もしてない
ましてその何もしていない娘にまで
何を理由にそんな仕事をさせるのかと
里のやり方には不満が募るばかりだった
忍の仕事は汚れ仕事が多いのは仕方ないが
理不尽でしかねぇ
だから 俺の嫁にすると言って
昔から知ってるアイツを
自分の嫁として引き取った
みくりの姿は裏山の
大きな杉の木の上にあった
樹齢数百年の立ってる場所が
立ってる場所ならご神木レベルの木に
みくりの姿を見つけることが出来て
「みくり、かき氷食え
俺からの土産だ、ありがたく頂戴しろ!」
「………かき氷?」
「ああ、レモン味のかき氷」
「頂き…ます」
要らないと言われるかと思って居たので
そのみくりからの返答は意外でしかなくて
地面を蹴ると 木を蹴りながら昇って
木の枝に座って居る
みくりの隣に腰を降ろする
いつもは顔を隠して覆っている布を
高所だからと外していたから
「勿体ねぇし。その顔隠しちまうなんて
勿体なさすぎ、隠すの禁止ね…。顔。
かき氷、食べるでしょ」
そう言って差し出された
レモン味の黄色いかき氷を受け取ると
ひと匙 かき氷を食べると
そのまま 嬉しそうな笑顔を浮かべながら
美味しそうにかき氷を食べているのを
みくりの隣に座って眺めていると
「あの、天元様…は、お召しがありには?」
宇髄が持ってきたのは
かき氷が一つだけだったので
みくりがそう問いかけて来て
「んじゃ、それ、俺も食うわ」
そう言ってあーんと口を開けると
自分の口を指差して来るから
自分が掬った後の匙で良いのかと
思いながらも促されるままに
宇髄の口の中にレモンの味の
かき氷をひと匙入れると
爽やかなレモンの香りと
甘いシロップの味がして
「レモンも美味いじゃん」
「もっと、お召し上がりになられますか?」
「じゃあ、みくりが
もっと、俺に食べさせてくれんの?」
そう言って口を開けるから
餌を待つ雛鳥に見えて来て
その口に求めるままに
かき氷を与えるのを数回繰り返して
はっとみくりが ある事に気が付いた