第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
「またこれか、つーの。
はぁ、俺はまだただいま言ってねぇし?」
自分の耳に血流を集中させて
自分の耳の精度を高める
気配を必要以上に殺せる相手を
気配で探すよりは
僅かな音を頼りに探す方が早い
あっちか…
向かったのは屋敷の裏の山の中の様だ
「雛鶴。俺のもうひとつの土産の方
まきをと須磨と一緒に用意してくんね?」
「ええ。畏まりました、天元様」
宇髄が嫁達にと用意していたのは
氷の彫刻の金魚だけでなくて
大きな機械と新聞紙にくるまれた
大きな氷の塊で
その大きな機械を覆っていた布を取ると
「って、これ、かき氷機…じゃないか。
それも、手削りのかき氷機」
「って、天元様っ、これっ!
もしかしてぇぇ、もしかしなくても
かき氷食べ放題ですか??」
まだ出来ても居ないかき氷を想像して
須磨が歓喜の声を上げる
「そそ、そう言う事。
かき氷でも食って、涼めばいいだろ?
と言う事で、好きにかき氷作って
食べろって事な。んで、アイツの分
用意してやってくれね?」
「天元様に、みくりちゃんが
慣れてくれたら。私達とも
一緒に食事したりお風呂
入ったり、寝たりもしてくれますかね?」
そう須磨が心配そうな顔をしながら
宇髄に確認を取って来て
よしよしと須磨の頭を撫でる
「アンタが、みくりを
追いかけ回すから、逃げるんだよ」
「酷いですぅ~、私は単に
みくりちゃんと
仲良くなりたいだけなんですッ」
そのまま 須磨とまきをが
それぞれの意見を譲らない言い合いになるが
その間も雛鶴がみくりの分の
かき氷を用意してくれていて
「天元様、みくり…は、
レモン味が好き…だったと思います。
前にレモンの蜂蜜漬けを作った時に
美味しそうに食べていたので」
そう言って数種類用意した
かき氷のシロップからレモンの
シロップを掛けて
出来上がったかき氷に宇髄に差し出して来て
「アイツと仲良くしてくれてる様で良かった」
アイツの家は…ある仕事で失敗して
家の格が落とされていた
家の格が低いのを良い事に
汚れ仕事の中でも汚い仕事を押し付けて
里から追い出そうとしていたのが見え見えで
抜けたら抜けたで 抜け忍として処理すると言う
その準備をしていたのを聞いてしまったからだ
アイツの親の失態も
本当の所は出世を妬んだ濡れ衣で…