第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
美空と炭治郎の会話は
みくりの耳には届いていて
炭治郎君って
同じ年頃の子と一緒だったら
こんな感じの喋り方なんだとか
いつもと違う彼の態度に
戸惑いつつも
彼と美空が今祭りを楽しんでると思うと
炭治郎君から美空を
引きはがす為の事とは言えども
内心複雑な心境だったりする
本当なら
私は こんな
白のワンピースではなくて
浴衣を着て
彼と夏祭りを楽しんで居た物を
本当なら 今頃……
私だって 炭治郎君とお祭り
楽しみたかったのに……なぁ
そう思って それからハッとした
私と炭治郎君とのやり取りを見て居た時の
あの美空とかって言う
幽霊はそんな気持ちだったのかなぁって
そう思ってしまって
私だって知ってる
炭治郎君は優しい
それも男も女も関係なく
みんなに優しいから
だから あの美空って幽霊にも
話しかけたんだろうなぁって
炭治郎君は罪作りな男の子だなぁって
あんな風に優しくされちゃったら
きっと女の子は勘違いしちゃうよ……
チクチクと自分の胸の辺りに
棘でも刺さったみたいに感じる
段々と辺りが暗くなって来て
少し休みたいと美空が言って来たので
縁日が並んでいる参道の辺りから
奥の境内の方へ入って
その更に外れた敷地の端の方へ移動する
「痛っ……」
美空が自分の右足の小指側を
サンダルの上から擦って居て
「ちょっと、足。見せて」
そう炭治郎が言って
美空の履いているサンダルを脱がせると
右足の小指の辺りが
靴擦れになっているのがわかった
「手ぬぐい、濡らして来るから」
そう言い残すと
炭治郎はその場から離れて
行ってしまって
ひとりぽつんと残されてしまった
足の痛みはもっと前からあったけど
炭治郎にそれを伝えたら
この楽しい時間が
終わっちゃうんじゃないかって
そう思えてしまって
言い出せないでいた