第69章 なつのおはなし ※裏なし掌編 お相手:色々
私の担当している社会の
地理も歴史も…彼の得意教科のハズなのにだ
地理の科目だけ赤点を取るとか言うのは
どう考えてもおかしい
同日の1限目の歴史は彼は
学年でも上の方の点数だったのにだ
それもそっちの方が難しくした試験だったのにだ
そして何故か誰も赤点を取れない様にした
こっちで赤点を取って来たからだ
いや 取ったからこそ
彼は今私の目の前に居るし
他の誰もが赤点を取れない様に
私がしたからこそ
今 目の前に彼しか居ないのだ
「俺は、基本的にいつも健康なので…。
体調を崩すことはありませんが?
時間…、過ぎてますが?補習の開始時刻」
そう言って適当に高校生に濁されてしまって
成績優秀な彼に無意味な
補習授業を行った
ホワイトボードに重要な事項を
カラーペンを使って書きながら
その手を止めて
ホワイトボードに視線を向けたままで
杏寿郎に対して問いかけた
「悩み…でも…あるのか?煉獄」
「は?悩み…ですか?」
「若い時の苦労は買ってもせよとは言うが、
何か、あるのか?若者特有の悩みでも」
若者の特有の悩みとは
自分でも言ってはみたが
「進路か?親御さんが、進学の
学費の工面が出来ないと言う生徒は
進学希望の生徒の中にも多いが…。
煉獄の家はその辺りの問題は無さそうだな」
「そう…ですね、俺の悩みは
そんな悩みではないです。父も母も
俺が行きたい大学に進学したらいいと」
ホワイトボードに文字を書きながら
「なら、人間関係の悩みか?
友人達ともいつも楽しそうにしてる様に見えるが」
「先生、担任でもないのに…見てるんですね」
「私は担任してるクラスはないが
進路指導の担当をしてるからな、
学年を全体的に見て置く必要がある。
煉獄、悩みがあるなら相談に乗るぞ?」
そこまで言って
マーカーの色を変えようと
持っていたマーカーを置いて
ホワイトボードの後ろに居る
杏寿郎のいる方を振り返ると
座っていたはずの杏寿郎が
自分の後ろに立って居て
「れ、煉獄?どうした?
今は、補習授業中…だ…、ぞ?」
「先生…、俺の悩みを聞いてくれると
貴方が俺に、そう言ったんだが?」
トン…とホワイトボードに
杏寿郎が手を付いて来て
みくりはその腕の間から
身動きが取れなくなって居て
「煉獄?お前の悩み…は…その…ッ」