第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
俺の隣で正座をしてた
みくりさんがすくっと立ち上がると
「ちょっと!アンタっ。黙って聞いてれば、
アンタが何処の、何様なのか知らないけど、
彼は、私と付き合ってるの!私の彼な訳っ!
勝手な事ばっかり言わないでくれない?」
「はぁ?おばさんは黙ってて頂戴?」
途切れ途切れだった
会話が炭治郎にも聞き取れる様になって
「なっ、誰がおばさんですって?
アンタ死んでんじゃないのよ!!
死んだ歳で止まってるんでしょーけど?
生きてたら、アンタのがおばさんじゃないの?」
「私は、14だもん。死んだのは去年の夏。
だから生きてても15だもん。
お分かり?お・ば・さ・ん」
白いワンピースの女の子は
そう得意げな顔をして言い放った
「みくり。お前の気持ちは
よーーーぉく分かる、分かるぞ?
だがな、幽霊は、日輪刀じゃ切れねぇぞ?」
みくりの右手が日輪刀の
柄に掛かっていたのを
陵厳がそう制すると
みくりが日輪刀に掛けていた
右手を降ろして 炭治郎の
隣にまた座った
「……で、そっちのお嬢ちゃんに
相談があるんだが…」
炭治郎の背後に居る
幽霊に向かって静かに言った
「その坊主から、離れる条件あんなら
飲んでやるが?どうだぁ?悪かねぇだろ?」
みくりが隣に座っている
炭治郎の顔を心配そうな
面持ちで覗き込んだ
明らかに炭治郎君の顔色が悪いし
全集中の呼吸も乱れがちだったから
呼吸に負荷が掛かっているのは確かだ
「炭治郎君、大丈夫……?辛そうだけど……」
その炭治郎の様子を
白いワンピースの幽霊が一瞥すると
スッと瞼を閉じて
自分の胸に手を当てた
「確かに、アンタの言う通りみたい。
私が側に居たら、炭治郎が苦しむ……」
「ああ、分かってんだったら、
坊主から離れるんだ」
「だったら、……思い出が欲しい、
炭治郎との思い出が欲しいの」
思い出…が欲しいと その幽霊は言った