第17章 夏の空の落とし物 前編 お相手:竈門炭治郎
パキッっと
床の上に置いていた
さっきみくりが淹れたお茶の入った
湯のみにヒビが入って
そのヒビからお茶が
まるで怪我をした所から
血が滲むかの様に漏れて来る
お茶が床へと広がって行って
耳鳴りが酷い
頭がクラクラする
呼吸が上手く 出来ないっ…
意識が朦朧としてきた頃に
女の声がした
「嫌よ、私は…炭治郎がいい」
「お前は、死んだ人間だ。
ここに居ていいもんじゃねぇ。
んで、そいつは生きてる人間だ。引き込むな」
そう淡々とした口調で
陵厳が言った
「私は、ずっと、
…ずっと炭治郎と一緒に居るの。
これから先もずーっと一緒。離れない。
だって、彼が言ってくれたのよ?私に、
一緒に行こうって」
「だが、お前が側にいる影響が、
坊主に出てるのにか?
それでも、そう言うのなら……」
ふと 炭治郎の視界の端に
ひらりと 白いワンピースが翻るのが見えた
そのスカートからは
白い足が伸びていて
その二本の足の向こうが
透けて…見えていて
ゴクリと炭治郎が思わず
固唾を飲んで
恐る恐るその後ろ姿の主を
確かめようと顔を上げると
白いワンピース姿の
女がそこに立っていた
女と言うべきか女の子と言うべきか
歳は俺と同じくらいだった
でのその身体は透けていて
でもこの子を 俺 知ってる
あの時 あの墓場に居た女の子だ
その人が この世界の
存在ではないのだと
炭治郎にも分かって
陵厳さんはこの女の子と
話をしているようだが
俺にはその子の声は途切れてしか
聞き取れず
会話が掴み切れないのだが
俺の隣に座っている
みくりさんの機嫌が
あからさまに悪くなっているので
何かみくりさんから
殺気にも似た気配を感じるんだけども……っ
気のせいじゃ…ないよな?