第67章 7月のある週末の話 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
そんな杏寿郎の寝言を
隣で聞いて居たからか
そのまま うとうとして
また夢を見ていた様で
神南港市に古くからある
市立の動物園に居た
ここは神南港市民なら
年に数回は訪れる様な
王道の定番のスポットで
両親が離婚する前は
歩いて行ける距離に住んでたから
子供の入園料無料だったし
良く連れて行って貰った場所だ
入口のゲートをくぐって
一番近い場所にフラミンゴが居て
正直昔から このゲート付近の匂いだけは
どうにも頂けなかった記憶がある
「ハハハハッ、ここは
何も変わってないな?」
自分の隣には杏寿郎が居て
「ベビーカー借りるか?
ずっと抱いてばかりも大変だろう?」
そう言って入口でレンタル出来る
ベビーカーが並んでる辺りを指差して
どうするのかと尋ねて来て
「いいよいいよ、今は寝てるから。
それより、杏寿郎はあっち見てて」
あっちとみくりが指さした方向に
猛ダッシュでメイン通路を走る
小さな後姿が見えて
杏寿郎がそれを追いかけて行く
酷くリアルな夢だな
実際にある場所で
自分の腰で固定してる
エルゴの抱っこ紐の
中にはずっしりとした重みまである
日除けをしてるから
その中を覗いても顔は見えないが
鞄の中からスマートフォンを取り出して
これが何年後の未来なのかを
見て見ようかとも思ったけど
そんな事もしなくてもいいかと
そんな事を思ってしまう
これが例え 何年後の未来でも
今自分が感じてるのは
ごくごく普通の幸せでしか無いから
目をまた醒ますと
杏寿郎がこちらを見ていて
「大丈夫か?うなされてたぞ?」
「うん、何か幸せな地獄絵図だったかな?」
「幸せな地獄絵図?何だそれは」
「夢、見てたの」
「もしかして、動物園に行く夢か?」
まだ何も話してないのに
杏寿郎がそう言って来て
そう言えばさっき
ホッキョクグマがどうって言ってたっけ
「ねぇ、杏寿郎、
月曜日のさ代休あるじゃない?」
「ああ。それがどうしたんだ?」
「動物園…行きたいなって」
ふっと杏寿郎が笑って
「偶然だな。俺もそう
君に言うか悩んでた所だ。
なぁ、みくり。もし子供が生まれて
どこかに出かけるとするだろう?」
「うん?するとしてどうなの?」
「普通のサイズじゃない、
大きいバンドエイドあった方がいいな」