第67章 7月のある週末の話 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
隊士としての復帰は難しいだろうと
それに顔にも火傷の痕はあったから
残り数年の命しか無い様な
ましてや顔に火傷のある女が
どこかの誰かの嫁になんてなれるはずもなく
私は命こそは助かった物の
鬼殺隊としても
女としても
死んだのだと 知った
元々この道を選んだのだ
この命を惜しんだ訳でもない
けど… けど…
鬼狩りとして生きる…事も
難しいのだと言われた
『小野寺さん、
私から今後の事で、ご提案があるのですが…』
その時に しのぶちゃんは私に
離隊をしてはどうかと勧めて来た
お館様には私の状態は
自分から話しを付けるから
どこかの片田舎で鬼とは無縁の
残された人生を過ごすのはどうかと…
それぐらいの退職金は
十分に貰えるだろうからと…
「みくり?」
杏寿郎が名前を呼んで来て
意識が大正の記憶から
現実の今に引き戻されてくる
「杏寿郎さん…、貴方は私に…
与えて下っていたのです…あの時に」
そう口を突いて出て来る言葉と
それと同時に目から零れる
あの時の私の涙
一瞬 ほんの一瞬
色んな映像が脳裏に浮かんで来て
その大量の記憶の波に意識を
引きずり込まれて攫われそうになる
それぐらいの強い感情を感じたんだ
罪悪感 罪の意識
あの時の私が ずっと杏寿郎に抱いている
「みくり!飲まれるな。
君が居るべき場所はここだろう?
君が君の中で自分を見失う必要はない。
俺は、君を選んだんだ。彼女だったから
君を選んだんじゃない!」
すっと周囲の景色が
見覚えのある
ホテルの部屋の浴室になる
「杏寿郎?」
「ああ、俺だ」
「気持ち悪い……ッ」
ムカムカして吐き気がして来て
目の前がチカチカする
ずっとお風呂…浸かったままだったからだ
そのまま 意識を失ってしまって
気が付いたら 下着は着けてなかったけど
バスローブを着せられていて
額に濡れタオルを置かれて
自分の身体は布団の上にあった
まさか 今度は自分が
杏寿郎に介抱される事になるとは…
「ごめん…、杏寿郎…」
「長い時間浸かったままだったからな、
のぼせたんだろうが、大丈夫そうか?」
今使ってるタオルと
新しく絞った冷えたタオルを
交換して貰って
火照りの残る頬を押さえる
「杏寿郎…、杏寿郎はそれでいいって」