第67章 7月のある週末の話 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
バシャっと水の跳ねる音がして
後ろから杏寿郎に抱き締められる
「君が首を縦に振ってさえくれたら、
俺としては、今夜からでも…と
言いたい所ではあるが。それも
君に思う所があるのなら、
子供はひとりじゃ作れないからな。
夫婦が揃わないと、作り様も無いだろう?」
夫婦が揃わないと子供は作れないと
杏寿郎が言って来て
「ああ、そのだな…、変に誤解を
して貰っては困るんだが。
その…、あれだ。物理的な方の
意味で俺は言ってるんじゃなくてな?
双方の同意と言うか、合意がな…。
何が、気掛かりなんだ?君は」
ギュッと後ろから
身体に回されている手に力が入って
気掛かりと言うのは
どうして私がそれにいい顔をして
いい返事をしないのかと聞きたいのだろう
「俺が見る限り、
子供が嫌いでも無いだろう?」
「子供はね、嫌いじゃないよ?」
「かと言って、俺が上司に言われていた
あの話を鵜呑みにしてる訳でもないだろう?
ブライダル関連の仕事は、今回ので
一応はひと段落付くからな。
上は他のブライダル関連の仕事も
俺達にさせたかった様だがな…断った。
俺達より、適任が居るからな」
「うん…、それが
原因って訳じゃないんだけど…」
その原因を聞きだそうとすればするほど
彼女の表情が曇る気がして
「彼女の事か…?」
そう言われてドキッとしてしまった
子供を作る事にあんまり気が乗らなかった
これと言う理由も無いのに
先延ばしにしたい気持ちばっかりに駆られて
後ろめたさを感じて居たんだ
「…そう、なの…かな?」
でもそうなのかもと考えると
ますます ソワソワして来てしまって
気持ちが落ち着かなくなって来る
「俺は…、あの時の君を
女性として引き受けると言いながら。
女性としての幸せを…、
みくり、君に、与えてやれぬままだったな」
そうあの時 あの下弦の壱と
炎柱になる前の 甲の隊士だった
杏寿郎さんが戦った時…
私は建物の中に閉じ込められた
子供を助け出そうとして
身体のあちこちに
大きな火傷を負ったんだ
その時 焼けただれて
柔軟さを失った皮膚は
本来の様な動きを妨げるだろうし
熱風を吸い込んだ肺は
肺の中まで火傷を負っていたから
全集中の呼吸も今までの様に使えば
残された正常な肺に負担を掛けて
自分の命を削るのだと…蟲柱様に聞いた