第63章 例えばこんな結婚式を 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
肌の露出の多いドレスだったから
流石にこの時間になると
少々この恰好では肌寒く感じる
アクアトピアの中に戻って
先程まで居た 大水槽の前に戻る
館内の照明は営業時間より落としてあるから
水槽の内部も薄暗い青い光に覆われている
底の方や岩陰
水槽の隅にじっとしてる魚の姿があるが
鰯の大群は 昼間と同じ様に泳いでいる
「鰯はいつ眠るんだ?」
「鰯は回遊魚だから、
泳ぎながら寝てるんだよ?」
「鰯も、ずっと泳いでないと死ぬのか?」
「回遊魚が全部が全部
泳いでないと、息が出来ない訳じゃないよ。
浮袋が未発達だから、沈んでしまわない
為に、泳ぎ続けているって言うのもあるし」
そう言いながら水槽に手を当てて
泳いでいる鰯の大群を見上げる
「魚も大変なんだな」
「杏寿郎はさ、寝るのが大変だとか
息するのが大変だって考えた事ある?
私達人間にとってはそれが、当たり前。
彼等鰯にとっては、それが当たり前。
自分だけがそうなんじゃなくて、
全ての鰯がそうなんだったら?」
杏寿郎がスマートフォンのカメラを
起動させて大水槽の鰯を背景に
インカメラに自分達を鰯が
一緒に納まる様に腕の角度を調整して行く
「なら、彼等には普通の事って事か」
「案外、向こうもそう考えてるかもね?」
そう言いながらみくりが笑って
水槽の鰯に視線を向けると
「人間は大変だよなぁって、
鰯が噂してるかも知れないって事か?」
カシャと写真をスマートフォンに
残しながら
「俺は、君のそう言う、
ちょっと変わった物の考え方とか
発想と言うか捉え方に惹かれたんだがな?」
きっとこれからも
俺はみくりの良く分からない
無駄知識の様な物に
生き物に対するイメージを
覆されて行くんだろうが…な
だが これからも
俺はみくりと
退屈知らずの毎日を
一緒に過ごして行くんだろう
「するか?キス、ここで」
「新婚旅行の時も、したよね?
大きな水槽の前でキス。こっちの
水槽の方が、大きいけどさ」
今日 何度目なのかも
忘れてしまった様な
キスを何度も交わして
そのまま 今日が明日に変わるまで
キスに溺れる
「日付…、変わっちゃったね」
スマートフォンに表示されている
2022 6/24 0:00 の表示が
今日の終わりを告げて居た