第63章 例えばこんな結婚式を 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
私は父さんの
本当の娘じゃないけど
血の繋がりも無いけど
そっと 差し出された手に
みくりが自分の手を預けると
今 私とお父さんは
親子に 父と娘に
なったのかなってそんな気がして
「みくりちゃん、行こうか?
杏寿郎君が待ってるよ?」
そう言って歩き出した父に
その手を引かれて
一歩 また一歩と歩み出す
父さんが母さんと結婚してすぐの頃に
転んだ私に差し出してくれた
手を 振り払ったのを思い出して
どうして もっと早く
この人が 私と親子になりたいって
そう思って差し出してくれた手を
ちゃんと 取らなかったんだろうって
そんな昔の事を 今になって後悔して
「ごめんなさい、お父さん…」
「あの時の事かい?
いいんだよ。もう、親子だろう?
違うかい?みくりちゃん」
みくりが小さく首を振って
「これから…、よろしく願いします」
普通の結婚式なら
今までありがとうございました…だろうのに
私の場合は
これから よろしくお願いします だった
昼間に見た時は
銀色の鰯の群れが泳いでいたのに
水槽の中も
天井からの布にも
ライトでピンク色の鰯が泳いでいて
床に映し出されている
鰯の円が
円形ではなくて ハート型になって居るのに
みくりが気が付いて
床に 鰯が文字を作って行って
泳ぎながら その文字が変わっていく
私の名前と杏寿郎の名前と
その文字を作っていた鰯が
またハート型になって行くのが見えて
正面を見るのを忘れて
下の鰯ばかり見てしまって居た
そんな事をしてる内に
杏寿郎の前にまで来ていて
父親からエスコートするのに
支えてくれていた私の手を杏寿郎に
託すようにして重ねさせると
上からその手を握って
みくりと杏寿郎の手が
握り合う様にして包んで来て
杏寿郎がみくりの父親にだけ
聞こえる小さな声で
「(お義父さん、娘さんは確かに
俺が、お義父さんの分まで
しっかりとお預かりしますので)」
と言ったのが
当然隣に居るのだから
私の耳には届いていて
ポロっと自分の目から
涙が零れて 頬を濡らしながら
伝うのを感じて
ギュッと杏寿郎が
私の手を痛い位に握って
穏やかな笑顔を向けて頷いて来る