第61章 呼びたい男と呼ばない女 お相手:宇髄天元 現パロ
「憶えてる?ここで…
何人かで夜景見た時にさ。
全然、見て無かったでしょ?夜景。
他の2人はさ、キャーキャー言ってた時にさ。
ひとりで、水溜まり見てたでしょ?」
正直 夜景に興味なんてなくて
そんな物を見て 何が楽しいのかって
そんな事を思ってたんだ
誘われて来たのに
誘ってくれた子は
食事の段階で もう一人の
宇髄さんの知り合いって男の人と
水無瀬大橋 二人で見て来るって
早々に居なくなってしまって
残ってた 全然知らない女の子と
ここに夜景を観に来て
知らない女の子とも
ほとんど話してない宇髄とも
話す事が出来なくて
帰りたいって言いたくても
それすら遠慮して言い出せずに
ここまで来てしまって居たから
もう ケーブルカーも止まってる時間だし
帰れない ので 居るしか無かったから
夜景を観に来たのは良いが
最初の5分で飽きてしまった
ふと下を見ると
前日の雨で出来た水溜まりに
月が 浮かんでいるのが見えて
その水溜まりで 遊んでいた
自分がそっと 靴の先を濡れない様にしながら
水溜まりに入れると
起こった波紋で ゆらゆらと水面の月が揺れる
「一緒に来てた友人には、
先に抜けられてしまって。
一緒に居た女の子も知り合いじゃないし、
その、人見知りするので…」
「俺とも、話…出来てなかったでしょ?」
「あそこで、置いて行かれても
帰れないので、仕方なく…」
宇髄がその展望デッキの部分を
手すりを撫でながら
歩いて移動し始めて
「でもさ、俺、気が付いたんだわ」
「気が付いた?何にですか?」
「上から下ばっか、見下ろして
人が作った灯りばっかり見てたんだなって」
「でも、私は、水溜まり見てたんですよ?」
「熱心に見てるからさ。覗いたの。
満月だったんだな、って、それで
気が付いた訳よ。それで上、見たんだわ。
この山に夜景はさ、週1、2は来てたし?
でも、ここに来て、上見た事なかったなって」
上 と言われて
みくりが上を見上げるが
青空と雲と 沈みかけつつある太陽と
どこに向かっているのかわからない
飛行機が飛ぶのが見えて
「下に見下ろす、宝石箱を
ひっくり返したみてぇなさ。
100万ドルの夜景の上によ?
それと張れるくらいの星空があったって事」