第61章 呼びたい男と呼ばない女 お相手:宇髄天元 現パロ
「んじゃ、夜になってからね?」
「また、そう言って、
教えてくれない感じですか?」
つかみどころの無い様な
そんな飄々とした態度の彼だから
どこまでが 本気で
どこからが 冗談なのかも
こちらからは 探りにくくもあるし
からかわれているのか
真剣なのかも 分からない
でも さっきも 言われてしまったんだ
彼が他の女の子にはしない事を
させない事を許さない事を
私には許しているのだと言う事
それも それを彼が
私に許したのは いつだったのかと
初めて 彼の あの
マンションに行った時の事を思いだすと
あの日も いつもみたいに
夜景をこの山に見に来ていたんだ
でも いつも 誰かと一緒だった
彼は遊ぶ時は
大体いつも 女の子 3人と一緒か
そうでない時は ごくたまに
女の子2人と男の子1人と一緒とかで
私は その中の一人でしかなかった
「俺が夜景、観に行く時はさ。
誰か、数人と一緒か。それとも
ひとりだけかどっちかなんだわ」
大勢と一緒か
一人だけ
そこまで 聞いて
自分の心臓がどきどきと騒がしくなる
え? 待って それって
「そ、気が付いた?」
そうとだけ言って
それ以上の言葉はくれなくて
でも その態度と表情で
分かる
誰かと ふたりきりで…
夜景を観た事が…ないって事だよね?
それも その ふたりだけで
観た事ないって言う夜景を
「勿論、付き合ってくれる感じ?」
「…天元さんが、いいのなら」
「みくりと、観てぇんだわ。俺」
そんな事を言われてしまえば
「私も…、観たいです。
天元さんと一緒に、夜景…」
それを 断れる女は
果たして存在しているのだろうか…?
「そ。そう聞いて、安心した」
そう言って 何とも言えない様な
気の抜けた様な笑顔になって
日高山にある ある展望台を
彼が目指している事に気が付いた
この山には幾つか展望台があるけど
そこの展望台は 下からなら
ケーブルカーの駅に直結していて
他の展望台よりも 低めの標高から
近い場所にある 夜景を楽しめる展望台で
日高山の 玄関口の様な場所だ
今はもう老朽化で取り壊されてるけど
回転する展望台がここにあったのを
憶えて居る