第61章 呼びたい男と呼ばない女　お相手：宇髄天元　現パロ

いつも　みくりに会う時は

夜だから　薄暗い店の中か
車の中で　それで誰かが居る時ばっかで

ふたりきりになるのは

俺のマンションのあの部屋で


俺が　ここに　みくりと来て

きっと　まだ　15分程しか経ってねぇ


その　１５分は　俺の知らない

色んな　この傘の色みたいに

色んな　みくりを俺に見せる


そう　例えば


そんな風に
人懐っこい笑顔で笑うんだなとか


そう　例えば


こんな風に
話を…するんだなとか



そう　例えば


俺の名前…も　普通に呼ぶんだなとか


俺が知っている　みくりの


半年分の　夜の顔とは


今の俺の目の前に居る　みくりの


１５分間の　昼の顔とは


まるで　別人みたいに感じる


半年も　過ごして

何度も抱いて


知ったつもり…に
俺が勝手になってただけだったんだなって


頭上のオレンジの傘が


徐々に赤く移り変わって行って


赤い光の影が　みくりの顔に落ちる



「呼んだから…、来たんだけど？」


そう　呼んだ
私が　彼を呼んだんだ


会いたいって言って　呼んだ


「呼ばれたから、来てくれた？」

「ったり前じゃん？呼ばれないと
来れないと思うけど？違った？」

「呼んだから、来てくれた？」

そう　みくりが問い方を変えて来て

その問いかけの答えを
多少返しにくいと感じながら

「そう…だっつったら？」




「じゃあ…さ、また、
こうして、呼んだら…、会ってくれる？」




頭の上も　足元も

一面の　赤　赤　赤に　染められた

その　赤い世界の中で

みくりがそう　
宇髄対して問いかけて来て



「呼んでくれるなら…、来るかもな」


「そっか」



そう　みくりが宇髄の言葉に
返事を返して来た時には

七色の世界は終わりを告げていて


明るい　日差しの下に戻って来ていた



「なぁ、戻ってもいいい？
写真撮り損ねてたわ、撮ってもいい？」

「ええ。そう言えば
私も、写真、撮ってませんでした」


そう言って　終わりを告げた

七色の世界をお代わりしていると


宇髄が　スマートフォンで
七色の傘の写真を撮っているのが見えて

周囲の傘の写真を撮っているフリをして

こっそりと　１枚だけ