第61章 呼びたい男と呼ばない女 お相手:宇髄天元 現パロ
「俺、アンブレラスカイが
見たいとかって、話したっけ?」
そんな話を 漏らした覚えねぇんだけどな
「そうじゃなくて、前に
何度か、夜景を何人かで見に行った時に。
綺麗な物が好きだって、言ってたから」
みくりが頭上の
レインボーカラーに
グラデーションが付きながら
色が変わって行く
ビニール傘で出来た アーチの
一番高い部分を指差して
「それに、アンブレラスカイは…
あちこちにあるけど、アーチ珍しいから」
そう言えば 確かに
アンブレラスカイって
大体 商業施設の通路を利用してるのが多いか
こんな風に わざわざ 骨組みを組んで
アーチ状に仕上げてあるのは
宇髄も見るのが初めてだった
と言いうか
こんなに話するんだな みくり
いつもは こっちから話を振って
一言二言 三言 やっとこさって感じなのに
その日は晴天で
春と言うよりは初夏を思わせるような
そんな強い日差しが刺していて
地面には その傘の色をした
傘の形の影が落ちて居て
みくりがその地面の傘に
自分の視線を向けると
「上にも、下にも、傘…あるね」
「上の傘見上げるのも良いが、
下の傘、こうして見るのも
悪かねぇしな。確かに夜じゃ
これは、見れねぇな。けど…良かったの?」
「良かった?ああ、はい、良かったです。
あっち、アーチの先の広場にも、
梅雨にちなんだモニュメントがあるらしいので」
そう言って 俺に背中を向けて
みくりが数歩前を歩き始めて
紫から始まった頭上の傘が
青色 から 水色に
水色から 緑に
そして その色が
緑から 黄緑へと その色を変えて行って
足元にある 色とりどりの影が
黄色からオレンジに差し掛った頃に
前を歩いていた みくりが
前にも後ろにも
下にも広がる 無数の傘の中で
その歩みを止めて
ゆっくりと 宇髄の方を向き直って来ると
「宇髄さんこそ、良かったんですか?」
「良かった?
あ…、ああ。来て良かったって事?」
ううん と目の前のみくりが
自分の首を横に振って
そうじゃないと 否定して来て
「こんな事に、
時間を使って良かったのかなって」
「こんな事?」
「私と、ここで、
こんな事をしてる事にですよ」