第60章 2人のハネムーンは… 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
みくりの言葉に
杏寿郎が自分の記憶を探るも
そのエビの名前は記憶に無かった
「いや、聞いた事もない
エビの名前だが…。
その、エビがどうかしたのか?」
「ドウケツエビはね、
深海に住んでいる、カイロウドウケツ
って海綿のね、中に住んでるエビなの。
そのエビはね、幼生の頃にね
その海綿の身体の中に入るんだけど。
その中で、成長したら
一生そこから出られなくなるんだよ」
「要するに、閉じ込められるのか?」
みくりがこのカゴの網目を見て
それを思い出したって言っていたか
「その、カイロウドウケツの中でね。
ずーっと、2匹だけで暮らすの。
小さい頃はね、雄でも雌でも
ないんだって。でもその中で
成長してね、雄と雌になって番になるの」
「籠るか?この中に」
そう冗談交じりに杏寿郎が言うと
「籠らないっ、ずっとここに居たら。
おトイレにも行けないじゃん。
偕老同穴(かいろうどうけつ)
って言葉知ってる?古い中国の
言葉らしくてね。夫婦は共に
生きて共に年老いて、死んでは
同じ墓穴に入れられるって意味なんだって」
「俺は別に…、
それも悪く無いと思うけどもな」
キョトンとみくりが
目を丸くさせてこちらを見ていて
「杏寿郎は、そんな小さな世界じゃ
じっとして居られないでしょ?
不自由しか、無いんだよ?」
「確かに、小さくて、何もない
狭いだけの世界かも知れないが」
杏寿郎がみくりの隣に
移動して来て
視線を合わせて 中から
その網目越しに世界を眺める
肩に彼が腕を回して来て
こうして 二人で ここから
外の景色を眺めていると
まるで 自分達が ドウケツエビにでも
なった様な そんな気分になりそうだ
「一年365日、24時間。
ずっと、君と居られるんだろう?」
ぷっとみくりが噴き出して笑って
「ビーナスの花かご…って、
呼ばれてるんだよ?カイロウドウケツ。
その見た目が、繊細で美しいから」
驚いた様な顔をして
杏寿郎がこっちを見ていて
「どうしたの?杏寿郎…」
「その、今回の話みたいな
話なら、もっと聞きたいんだがな…。
カタツムリは…勘弁だ。恋の矢で
相手をめった刺しなんて…、
とんでもない…と言いたいが…。
自分が、番った相手が…
他の相手と番う事の無い様に…と
してしまいたくなる気持ちも…」