第60章 2人のハネムーンは… 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
名勝の砂浜を後にして
南水無瀬を目指すべく
車に乗り込む時に
「ねぇ、杏寿郎」
「ん?どうかしたか?」
「場所。交代してよ。
私も、この景色で走りたいからさ」
運転席に座りたいと
そうみくりの方から
杏寿郎に申し出て来て
断わると 変に機嫌を損ねそうでもあるし
お言葉に甘える事にした
運転席について
エンジンを掛けると
ラジオからは
数年前のこの時期に
流行していた曲が流れて来て
付き合い始める前の
当時の記憶が蘇って来る
あの頃の 私は
あのネモフィラ畑での
彼からの告白を思い切りお断りしたと言う
とんでもない 経緯があって
グループでのバーベキューの場での
告白だったから 恥ずかしがって
皆の手前断ったんだろう…と言う
周囲の勝手な解釈で
その後の空気感が微妙になったのは
言うまでも無い話ではあるが
「懐かしいな、この曲…」
杏寿郎も同じ様に感じていた様で
そう漏らす様に言って来て
「あのさぁ、…杏寿郎の事をさ、
振ったりする人って居たの?」
「君以外でか?」
それも 一度や二度じゃないしな
そう聞き返してからの
杏寿郎からの返答は無かったから
居なかったんだろうなぁと
そう私が解釈するのには
十分だったけども
「だったらさぁ、杏寿郎はさ。
どうして、何度も言ったりしたの?
普通は、一回断られたらさ、
諦めちゃうもんじゃないの?」
「嫌われてないと、思ったからな。
嫌われて断れれてるなら、
俺も諦めるが。そうでないなら、
そうなり得なくもないと、思ったからだが?」
一瞬
ほんの一瞬だけだったが
ハンドルを握っている
みくりの横顔の
表情が曇って
それから視線が鋭く変わる
それも ほんの一瞬だけだったが
「嫌いでも無かったかも知れないけど、
好きでも、無かった…よ?」
「うん?何かと思えば、そんな事か?
好きでなくても、好きになる
可能性ならあったろう?だからだが?」
何か 問題でもあったのかとでも
言いたげにそう返されてしまって
「気の長い…話」
そうボソッとみくりが言って来て
「そうか?
そうでも無いだろう?
その答えなら、もう
出てるんじゃないのか。
違うか?みくり。それに…
君といると、飽きる事も無いし。
時間が過ぎるのが早過ぎる位だ」