第59章 2人のハネムーンは… 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
「もっと、…俺に全てを
許してくれてもいいんじゃないのか?」
「んんっ、杏寿郎ッ、ズルいっ…
杏寿郎っ、んぁあん、ズルい…よ」
ギュウウっと抱きしめられる
その腕の力は息が詰まりそうな程に
強くて 苦しい程で
「俺と、君とは夫婦だろう?
喜びも、苦労も、悲しみも全部
俺は、君と共に分かち合いたい…んだ」
彼の言いたい事は 分かってる
杏寿郎が言っている
分かち合いたい物は…
他の何物でもなくて
私の中にある
彼の知らない 大学時代の時の事で
誰にも話すつもりもないままに居る
彼と付き合う前の時の事で
「…つけて?」
「みくり?」
「私の身体に…、もっと、
つけて欲しい…、杏寿郎の跡を…」
そう こちらに
懇願する みくりの目には
涙が滲んでいて
例えば 君の その願いの意味だとか
例えば 君の その涙の意味だとか
その目から零れ落ちそうになる
その涙を自分の唇で掬い取ると
「みくり、俺ではダメなのか?」
例えば 何故と 君に 問うのは
俺には許されて居ないのかとか
ふるふると杏寿郎の問いに
みくりが首を横に振ると
「杏寿郎が…、いいんだよ。
杏寿郎じゃないと、ダメなんだよ…ッ」
そう言って縋り付いて来る
みくりの背中をさすりながら
よしよしと頭を幼子の頭を
撫でる様にして撫でた
唇を重ね合わせて
お互いの舌と舌を
確かめ合う様にして触れる
こんなキスは…した事がない…なって
そんな事を考えていた
舌を絡め合ってるのに
いやらしさの一つも無くて
「みくり。君の過去がどうであれ、
今、俺の目の前にいる、この君が、
今の君だろう?俺は、…それでいいと
そう思ってるんだがな?ただ…
その過去が、君のその表情を
曇らせるのならば、その憂いを…
拭い去りたいとそう思って居る」
聞いて 気分のいい話ではないのだ
話して 何かが解決するとも思えない
返事をどう返せばいいのかと
みくりが言葉を発せずに居ると
「だが、俺が君に
そうして欲しいと願う事が、
望むことが、君の
負担になるのなら、俺はそうしないが?」
話したい 話せない 話したくない
その葛藤の色が目の前に彼女に見えたから
そう 言いはしたものの…