第59章 2人のハネムーンは… 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
「お許し…下さいませ。炎、柱…んッ
お目汚し…に、ございます…のでッ」
自分の口を付いて出た言葉
言ってるのは私じゃない
もう一人の方の私で
見られたくない 見せたくない
その気持ちで胸が締められて
息が詰まる
意識してないのに 勝手に
涙が零れて行く
「も…、う、…私は…っ、
到底、んんっ、
女と呼べた物などでは…ンんッ。
今の、私は…何の価値もないっ
かたわ者に…、あります故…ッ」
ファスナーを降ろそうとする
その手に自分の手を重ねて
脱がせようとする彼を拒む
見せたくないと拒んでいるのは
自分の身体にある
醜い火傷の痕だ
ある訳ない
ない そんなものは無いのに
グッと彼の手を抑えている
自分の手に込めている力は
本気の抵抗でしか無くて
「そんな事、誰が決めたんだ?
誰かが、君にそう、言ったのか?」
グイと襟首を掴まれて
顔の前に顔を突き合わされる
「…炎…柱…」
「言わせない」
「へ?」
「そんな事は、俺が言わせないと
そう言ったんだ。君が自分を
無価値だと言うのなら…、かたわ者だと
言うのならば、俺がそれを違うと
証明して見せればいいんだな?違うか?」
あまりにも 重い
杏寿郎の発した言葉の意味が
痛い程に突き刺さる
「私は…、貴方の
枷になりたくは…ございません。
鬼殺隊は…抜けます…。
もう、私の事など…お忘れに…なって」
そう 縛る
私の身体にあるそれは
彼を縛るのだ
自責の念と
罪の意識で 縛り続ける
解けない 糸の様な
切れない鎖の様な
そんな物でしか 無いのに…?
「どう…して?」
「何故?そんな事を聞く必要がある?」
ジッと みくりが
下から睨みつけるような視線を向けて来て
徐に 手を俺の顔に伸ばして来て
スルッと 愛おしむ様にして頬を
撫でつけて来ると
ピトッと 額に指を当てられて
ビシッと思い切りデコピンをされてしまって
「…っ!!何をするんだ?突然ッ」
杏寿郎が自分の額を
両手で覆いながら
不満を露わにして来るから
その様子を見て
ほっとしてる自分が居て
「何するんだは、こっちの台詞でしょ?
杏寿郎。大丈夫?戻った?」
「ああ。もう、大丈夫だ。戻った。
なぁ、みくり。変な意味じゃなくて
見てもいいか?」