第59章 2人のハネムーンは… 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
不知火だって言ってから
ハッとした 不知火って何?
生憎だが私の中にある不知火は
あのみかんだと杏寿郎が言い張る
あのデコポンの事だし
もうひとつの
不知火は 日本一のくのいちの方だ
自分の口をついて出た言葉だけど
全然意味が分からない
分かるのは 杏寿郎が
スタッフの人が仕事置いて見に来るぐらい
フライボードが上手いって事ぐらいだ
10分の フライボードを終えて
杏寿郎が砂浜に上がって来る
みくりの方を見ると
期待している様な表情はして居なくて
何か気掛かりがある様な
そんな浮かない表情をしていた
凄いね カッコ良かった
惚れ直しちゃった…的な
そんな感じの言葉を期待してたんだが
『兄さん、凄いねぇ。
こんな、上手い人初めて見たけぇ』
そう方言の効いた口調で
日焼けのスタッフが杏寿郎に声を掛けて来て
それで 気が付いたが
この小さな島にこんなにスタッフさんが
居たのかと思う程に砂浜に集まってる
と言う事に気が付いた
「俺としては、バックフリップまで
したかったんだが…」
『このまま、良ければですが。
もう、1セット行きますか?
俺、バイク操作しますんで、
バックフィリップ合わせますよ?』
テルと言う名のスタッフが
そう杏寿郎に声を掛けて来て
『いいさねいいさね、上には俺が
内緒しとくけぇ。行っとこ行っとこ』
『リーダーが、一番緩いんで、ウチは』
みくりの隣に居た
女性のスタッフがそう言って来て
『いーのいーの、お客さん
みたいな人なんて、1年に1人も来んさね。
テルがこう、言ってるんだしよ?』
『うちのスタッフのテルは、
経験者の指導を主にしてるんですけど。
フライボードの大会にも出てるので』
「杏寿郎、とりあえず。
ちょっと、水分補給する?
動画はちゃんと、撮影したんだけどね」
そう歯切れが悪く言って来て
ウッドデッキに水を取りに戻ると
杏寿郎の方へ差し出して来る
「はい、杏寿郎。お水」
「ああ。ありがとう。
でも、良いのか?みくり。
俺がもう1セット行ったら
もう10分程待たせる事になるが…」
受け取ったペットボトルの
水を喉を鳴らして杏寿郎が流し込んで行く
「うん、ここで見てるから。
もっとしたいんでしょ?いいよ。
あのさ、杏寿郎…、不知火って知ってる?」