第59章 2人のハネムーンは… 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
それを問いたいのだろうが
問うた所でその答えを
今のみくりは
持ち合わせてなど居ないのだから
俺からすれば どうでもいい事だ
今の 彼女は生きていて
今 俺の隣に居るのだから
「どうでもいい事は考えるな…」
その言葉が杏寿郎の口をついて出た
だが それはどうでもいい事なのだろうか?
俺にはどうでもいい事でも
彼には
どうでもいい事ではないだろう…からな
ただ 俺にも彼にも 分かってるから
その言葉が 俺の口をついて出る事は
無いのだろうが
命は有限だ 無限な物ではない
100年は生きられても
流石に200年 300年とは生きられない
「鬼でもない限り…はな」
鬼と言う言葉が自分の口を付いて出て来た
鬼?
架空の物だと そう思うのに
その存在が 自分の中の奥底にある記憶を
酷く揺さぶる様な そんな感覚を憶えた
一瞬 ほんの一瞬
ヴィラの中に 居たんだ
その見えている景色に
別の景色が重なる
木製の列車の車内だ…
それもただの車内じゃない
壁や床が生々しい肉塊に覆われている
列車の車内の光景
『杏寿郎さん、ここは私が抑えます』
聞き覚えのある 声がした
『ああ。みくり。
ここは君に頼んだぞ。
俺は竈門少年の所へ向かうからな。
全く持って、柱として不甲斐なし!』
この声は…俺の…声…だ
そうだ 俺は…
フッとそのおどろおどろしい光景が
元居た部屋の光景に戻って
現実に引き戻される
ドッドッドッ…
自分の心臓が酷く脈打つ
その拍動の強さに思わず自分の
左胸を押さえつけた
そうだ 呼吸を呼吸を整えるんだ
「んんっ、杏寿郎…、どこ?」
半分寝ぼけているのか
隣に居た俺が居ないのに気付いた
みくりが布団の中に腕を伸ばして
そこに居たはずの俺を探している様で
その布団の中をまさぐっていた
みくりの手をギュッと握ると
ふにゃと眠っている
みくりの顔が緩んで
口の端を曲げた
考えてもどうしようもない事は考えるな…
そうだ それでいい
それでいいんだ
だって これが 今ここにあるこれが…
俺の現実…なのだから
余計な事を考えるのは良そう
そう思って みくりの隣に潜り込んだ