第58章 今年の彼の誕生日は…後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
目の前に居る みくりの
憎まれ口が堪らなく
聞きたい衝動に駆られていて
不安が広がるのを感じる
自分の胸の中に 広がって行く
「ねぇ、杏寿郎…、私ね…」
そうそこまで みくりが
何かを言いかけて
そのまま 黙り込んでしまった
言葉を濁した その理由は… 聞かずとも
何となくにだが想像がつく
その僅かな欠片を思い出せば出すほど
知れば知る程
俺は俺を失うし
彼女は彼女を失う
「君は、それを思い出したいか?」
目の前のみくりに
そう問いかける
「ううん、思い出したら…。
自分が、その為に生きてるみたいに
なっちゃいそうだから、知りたくない。
私が、今、杏寿郎とここに居て、
出会って、付き合って、
結婚したのも…全部、全部…」
「ああ。そうだな…。
俺も、それでいいと思ってるし。
そうだったんだと、信じたい。
いや、違うな、信じてる」
ギュッと杏寿郎の身体に
みくりが縋り付いて来て
「自分が、そうしたくて
そうしたんだって、思いたいの。
そうだって、思ってるから。
そうで…、あって欲しいの。」
「みくり」
ベットの頭元に置いてあった
テッシュケースから数枚
杏寿郎がティッシュを引き抜くと
その束になったティッシュを
顔に押し当てて来て
「鼻、かんどくか?出そうだろう?」
「かみますっ!かめばいいんでしょ?
どうせ、ズルズルだって言いたいんでしょ」
そのティッシュでみくりが
垂れそうになっていた鼻水を
ちーんっとかむと丸めてゴミ箱に捨てる
「ズルズルになるのは、
別の場所だけでいいがな?」
「そっ、そっちは…まだっ
ズルズルには…、なってない…けどッ」
「そんな冗談はさておき、
確かめたいんだが、いいか?」
肩を掴まれて
ベットの上に身体を倒される
「え?でも…杏寿郎、
さっき言ってた事は?」
「俺がそうしたい、気分なんだ。
付き合ってくれるだろう?
俺の愛しい、奥さん」
「付き合って…あげなくも…無いかな?
旦那さんの、お望みだもんね」
お互いの頬に手を添えて
愛おしむ様にして 頬を撫で合う
コツンとお互いの額を合わせて
ぐっと押し付け合う
「流石は、俺の奥さんだな。
なら、君には付き合って貰おう」
「ねぇ、杏寿郎」