第56章 今年の彼の誕生日は… 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
みくりの前に
そのディーゼルの腕時計の箱を置くと
「俺は手が塞がってるから、
開けてくれないか?」
私の身体をギュッと後ろから
杏寿郎が抱きしめながら
箱を開けて欲しいと言って来て
「そんな、高いやつじゃないよ?
これが、杏寿郎に合いそうだなって
選んで、買ったヤツだからさ」
その箱を開けると
ディーゼルらしい大きな文字盤の
ごつごつとした男性的なデザインの
黒い腕時計が出て来て
アナログの時計の
文字盤が赤味を帯びた物だ
真っ黒の方とこれと
もうひとつ上のグレードの
黒で文字盤が赤ぽいのとで
悩んだんだけど
一番杏寿郎に合いそうだなぁって思ったヤツだ
「着けてくれるんだろう?腕に」
そう言って みくりから
腕時計が付けやすい様に
左腕を杏寿郎が出して来て
「え?今着けるの?
でも、これから寝るんだよ?」
今着けなくてもと言いたげに
みくりが返すと
頭頂部に顎を食い込まされてしまって
「痛いっ、それ、痛いから
分かったから、顎カクカクして来るの
止めッてってば!杏寿郎ッ、着けるからさ」
「わかれば、よろしい」
これから寝るのに腕時計着けろとか
私の旦那さんは我が儘さんだな
望まれる通りにそうすると
「着けたよ。どう?
杏寿郎はさ、腕とかもしっかりして
筋肉質だからさ。ディーゼルの
腕時計似合いそうだなぁって」
「腕時計に、似合うとかあるのか?
時間が分かればいいんじゃないのか?」
みくりの指先が
杏寿郎の腕の時計のベルトを撫でて
「俺の事…を、独り占めしたいって
君の心の現れなのなら、喜ばしいんだがなぁ」
「そうだって言ったら?どうするの?
杏寿郎の時間を、独り占めしたいって。
私が、言ったらどうする?」
ギュウウっと後ろから抱きしめられて
杏寿郎の唇が項に触れる
「喜んで、独り占めされるだけだがな?
どうだ。みくり、俺を
このまま、独り占めして置かないか?」
そう杏寿郎が言って来た言葉に
みくりが首を縦に振った
ーーーー
ーーー
ーー
ー
朝になって シャワーを浴びて
朝食と支度を済ませると
市役所の開庁時間は8時半からだから
その時間に合わせて
市役所に行くと言っていたので
家から車で10分程の場所にある
市役所へと杏寿郎と向かった