第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
「ダメ…ですか?」
「そう、そんな顔で
強請られてしまっては、
こちらとしては、断わる理由も無いが。
君は、それでいいのか?小野寺。
急いで、そうせずとも、
結婚してしまえば、
毎日口付けもそれ以上もになるんだ」
なら 今はそれを急がなくていいと
そう言いたげに言われてしまって
よしよしと杏寿郎の手が
小野寺の頭を撫でて来て
「君は、片割れと義勇が気になる様だが。
俺は俺と君のペースでいいと、
そう思って居るんだが?
何もかもを形にはめてしまわなくても、
いいんじゃないのか?俺は俺で
君は君で、俺と君の形でいい。
これから先の、人生を共に歩むんだ。
今を急ぐ必要もあるまい」
ゆっくり夫婦になればいいと
そう言う意味なのだろうか?
「杏寿郎…さん?」
「それとも、小野寺は、
口付けがないと不安で不満か?」
艶やかな小野寺の黒髪を
杏寿郎が一房 その手に取ると
その毛の束に口付けを落とす
「例えば、ここに
こうしても口付けだろう?」
「でっ、でも…それはっ」
私が言いたかった口付けじゃなくて
「ふむ、俺の小野寺は
これではご不満らしいな、ならこれは?」
そう言って手に持っていた
艶やかな髪を逃がすと
小野寺の手を自分の手に乗せて
その手の甲に口付ける
その手の甲の口付けが
数度 位置を変えて落とされて
そのまま 口付けが指先へと降りる
グイっと手首を持って手を返されると
今度は手の平の方側に口付けられて
そのまま 指先へ向かって
杏寿郎の口付けが上って行く
指先までそれが辿り着くと
ふにゅとした唇の感触ではなくて
ペロッと指先を舌で舐められてしまって
「ひゃ…ッ」
「驚いてしまったか?小野寺」
「大丈夫…です、ので…ッ」
「もっと、別の場所にも…するか?」
そう 甘い声で囁かれて
その問い掛けに小野寺が頷いた
口付けは額から瞼
眉間から 鼻へ位置を変えて落とされて
そのまま こめかみから頬へと移動して
少しずつ 頬の内側へと
口付けが位置を変えて来る
杏寿郎の親指が
小野寺の唇を撫でて
「いいのか?ここにも」
その 問いに
自分の首を縦に振ると
ちゅ…と軽く そっと触れた唇は
すぐに離れてしまって
「これで、納得したか?」