第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
そうとだけ 槇寿郎が言って
「あの…スルタン様…」
そうみくりが槇寿郎に
声を掛けて来て
「何故…、スルタン様をそれを
義勇様にお伝えになられないのですか?」
「金目の娘、お前、今の一瞬で
何か、要らんもんまで見て来たな?
忘れろ、忘れてしまえ。口外する事は
許さんぞ?極刑に値するからな」
「良いのですか?スルタン様
金目の娘の命を奪う事は、
星の加護を失うと言う事…。
ポーラスターの加護を失いますれば、
導きを失いまするのに」
そのみくりの言葉に
槇寿郎が顔を歪ませる位に
しかめっ面をしていて
義勇の選んだこの娘
スルタンである 父上に
臆する事なくに 意見するのかと
杏寿郎は穏やかそうな
小野寺の片割れのみくりの方が
父上に対して
気丈に振るまっている事に気が付いた
「それに、私を手討ちにする事は
誰にも、できませんので。物理的に」
ゆらっと…みくりの後ろに
蠢く影の様な物が見えて
そうか これだ
初めて みくりに会った時に
狼を捻り殺していた 何か…だ
それの放つ 威圧感に
怖気がするのを感じる
「気まぐれな物ではありますが、
私に牙を向ければ、牙が返るのです」
地の底から湧き出る様な
怖気に対して みくりがそう言って
気まぐれと表したソレの得体が知れない
「そいつは何だ?呪いか?加護か?
魔術師を集めろ!呪いを解け」
「呪いではありませんよ?
気まぐれだと言いましたよね?私は」
そう みくりが言って
「気まぐれは、その名を持たず。
その姿をひとつとせず、
その存在は無限であると同時に無数にあります。
それと同時にまた、虚無でもあるし
色なれば黒とも白ともありながらに
色を持たず、無色な物に御座います」
小野寺がそう付け加えると
「これについて、お知りになりたいのであれば。
その指輪を鍵にして開く、こちらの真下の
地下にある隠し通路の先の、ワニを超えた
蛇の先にある、部屋に、気まぐれについて
書かれた、禁書がございます故。
スルタン様はこの国を統べる者でありますれば。
気まぐれは、スルタン様に統べらぬ物を
統べる者にあります」
そう言ってみくりが
槇寿郎に小さく頭を下げた
「気まぐれは、牙を向けねば
牙は決して向けません」