第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
「大丈夫だ、俺が居る。
呼ばれたと言う事は、選ばれたと言う事だ」
「し、しかし…、あの石が
私の器に収まり切りますか…ッ。
ともすれば、石に意思を吸われて
しまいそうにあります…」
そう 心配そうにして私の顔を
覗き込んで来る この深い深い
海の底の様な 深い青…
吸い込まれて沈んでしまいそうな
そんな感覚を その存在から感じる
「よっと…、この奥…か」
店の主人が床に這いつくばって
引き出しを引き抜いた後の場所に
自分の右手を入れると
手探りでその中を探っていく
指先に触れた
異質な感触があった
包帯でグルグルと巻かれた
焼き物で出来た 箱だった
まるで 小さな棺の様な
その箱を
店の主人が テーブルの上に置いた
「在るだけで、溺れそうな石だな」
この小さな店を 威圧感の様な
プレッシャーが包んでいた
空気はあるのに 溺れている様な
息苦しさを感じる
「お嬢ちゃん、お前さんの
探し物はこれでいいのかい?」
「恐ろしいのです…、
堪らない程に恐ろしいのに…。
逆らえそうにありません…」
「呼ばれてる…ってことかい?」
主人の問いにみくりが
小さく震えながら頷いた
恐れつつも惹かれるとでも言うのが
その顔を見てると似合いそうだ
「中を改めても?」
「ああ、俺も、存在を知らなかったモンだ。
これは、アンタ等の好きにすりゃあいい」
義勇の問いにそう主人が返して来て
恐る恐るに義勇が
その棺の様な箱を開いた
その瞬間に
消えたのだ
さっきまであった
威圧感が 無くなった…?
「どう言う事…でしょうか?石が
まるで…、別物の様に蓋を開けた途端に。
怖く、無くなってしまいました」
「同じ石…なのか?」
その感覚は義勇も感じて居た様で
訝し気に顔を顰めた
「しかし、今のこの石は恐ろしくありません」
「石じゃなく、アッチが
その威圧感の原因だったのかもな」
そう主人が 静かに言って
棺の様な 焼き物の箱を顎でしゃくった
「主人。この石を頂こう」
スッと店の主人が
義勇がテーブルの上に置いた
2本の腕輪を付き返して来て
「それは、商品じゃねえ。持ってきな。
売りもんじゃねえつったろ?
これは、持って帰れ。お代なら
その、焼き物の箱だけで十分だ」