第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
そっと 自分の唇に重なる
目の前の人の 温もりに
自分の胸がギュッと締め付けられる
不思議な気分…だ
こうするのは 初めてのはずなのに
自分の奥底のどこか…で
この温もりを 記憶していて
「不思議…な、気分…だな…」
そう義勇が漏らす様に呟いて
その短い 僅かな
触れるだけの口付けは
堪らなく 懐かしいとそう感じさせて
そして それを感じているのは
私だけではなくて
「もしかしたら、私は…。
私となるずっと昔から、義勇様を
お慕い申し上げていたのかも知れません」
「もう一度…、そうしても?
確かめても…、構わないか?」
正直…それを 確かめたかったのか
自分の答えを出せぬままに
再び 口付けをされる予感を感じて
そのまま 唇を重ねる
ちゅ…っ ちゅ…
とほんの僅かに 数秒に
触れるだけの 短い口付けを
少しずつ位置をずらして
唇の全体に行きわたらせて来て
その後に ギュッと
押し当てる様に口付けられると
ビクッとそれに反応して身体が跳ねる
「……んッ」
「…弱った…」
「…如何、なさいましたか?義勇様」
サラっと 髪を義勇の手が撫でて来て
その青い深い海の色の瞳の奥に
熱い熱の様な物が揺らぐのが見える
「口付けた…まではいいが。
終わり方…が、分からない」
そう困ったような顔して
義勇が漏らす様に言うと
苦笑いの様な 笑顔を浮かべて来て
口付けを終わらせられないと言う
その言葉に もっと
彼に口付けられたいと思ってしまう
「みくり…」
「義勇…様…っ」
その心地いい温もりを感じると
もっと 感じたいと思って
口付けを繰り返して
止められずに居て
「これで…、最後にする…」
と口付けの合間に言われて
終わってしまわないでと
思わず ギュッと義勇の
服の袖を掴んでしまっていて
「そうされると、…終われない」
グッと強く 身体を引き寄せられて
唇を押し当てられる
「んっ…あと、少し…だけ…」
「だったら、もう少し…」
角度を変えて 繰り返される
触れるだけの 口付けの間に
ほんの僅かにだけ
彼の舌が 私の唇に触れて来て
ビクッと思わず身構えて身体を硬くすると
目の前のその人が ふっと笑って
「今夜はここまでだ」