第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
知らぬ内に眠ってしまって居た様で
不意に みくりが目を醒ますと
目の前に長いまつ毛をした
整った端正な顔が見えて
え?え? 義勇…様?
「…んっ…」
その顔が僅かに歪んで
長いまつ毛の付いた瞼が開いた
深い 海の様な色の瞳がこちらを見ていて
その瞳に 困惑した表情の私の顔が
映って見えていた
「…ふぁ…、知らぬ内に眠っていたか」
口元を押さえて あくびをする
義勇の その気の抜けた姿に
どきっとしてしまった
そんな 表情をするんだと驚いてしまった
「ん?…まだ、寝たりないか?」
「いえ、その、少し休んだので
身体も随分と楽になりました」
「なら、湯を頂きに行くか?」
部屋の柱の時計で時間を確認すると
夕食を食べながら 寝てしまって
気が付くと 10時過ぎだった
「お湯?頂く?」
「風呂に入ると言ってるんだが?」
「お風呂と言うのは、何でありますか?」
「草原の国には、風呂に入ると言う
習慣が無いんだったな。身体の汚れを
洗い流して、湯に浸かる。それが風呂だ」
「えええっ、そんな事をしたら、
怒られてしまいますっ。お湯は
沸かして、家族皆で身体を拭くのに
使いますから、そのお湯に浸かるなど…」
みくりは草原の国の出身
移動式のテントでの生活だし
水も貴重な草原の土地だ
「温泉が湧く場所が、
あると聞いた事があるが?」
「温泉?恵みの泉にありますか?
草原の土地に温かい、湯が混じる
泉があると聞いた事があります」
義勇が立ち上がると
備え付けてあった 簡素な寝巻と
ふかふかのタオルを みくりに
差し出して来て
「なら、風呂の入り方も知らない…のか?」
「ええ。身体の汚れは拭くか
大きめの桶で、洗い流す事はありますが。
洗うのも流すのも、浸かるのもその
大きな桶で済ませますので…」
「分かった。なら、先生を用意しよう」
そう言って 義勇が部屋を出ると
しばらくして戻って来て
「俺が、入り方を
教える訳にも行かないからな」
そう言っているが
自分も風呂に入る用意をしている様だったが
一緒に宿の浴室へと移動して
それぞれに 男女は別に入るのだと知った
入り方を知らないと説明をしてくれていた様で
宿の奥さんが 色々と教えてくれた
髪をこんな沢山のお湯で
洗ったのも初めての経験で