第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
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その頃の みくりは
宿屋で用意された
夕食を食堂で摂っていた
他の宿泊客も食事をしているし
食堂はパブとしても利用できる様で
周囲が騒がしくて落ち着かないし
それにお酒の強い匂いが凄いする
アルヒや馬乳酒の匂いなら慣れてるけど
ブドウ酒やビールの匂いは苦手だ
「みくり。大丈夫か?
少し待って居ろ、話をしてくる」
そう義勇がみくりに声を掛けて来て
そのまま 席を離れてどこかへ行ってしまった
ぽつんと一人 テーブルに残されて
「えっと…」
どうしていたらいいのかと戸惑っていると
『おう、何だ?こんな店で
独り酒か?姉ちゃん、
相手が居ないんだったら
俺が、酒の相手になるぜ?』
相当に飲んでいるのか
その人から酒の匂いがする
「いえ、結構にあります、
私はお酒は飲めませんし、
それに今は一人にありますが。
一人ではありませんので」
『あん?何だぁ。大人しそうな
見た目してんのに、結構ハッキリ
言ってくれちゃうじゃん、姉ちゃんよぉ』
そう言いながら
飲んだくれの男が
こちらに向かって手を伸ばして来て
思わず身構えた時に
「悪いが、彼女は俺の連れだ。
無粋な真似は止せ」
あの屈強そうな男の腕を
義勇が掴んでいて
バッと男がその手を振り解くと
痛かったのか掴まれた手首を押さえながら
『なんだよ、男居んのかよ。
興覚めだわ、あばよ』
そう三文の捨て台詞を残して
そのまま すごすごと退散して行って
「みくり、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました。
何ともございません。義勇様」
「少し、目立ちすぎ…たか。部屋に戻る」
バサッと義勇のマントで
身体を覆い隠されてしまって
外から姿が見えない様にされて
そのまま 食堂から泊まる部屋に戻った
「疲れているのに、最初から
こうすれば良かったと、気が付いた」
こうすれば良かったとは
どうすれば良かったのだろうか?
そう思って居ると
下の食堂で食べかけのままで
置いて来た 夕食を
宿の人が部屋まで運んで来てくれて
部屋のテーブルの上にそれを並べて行った
「あの…、義勇様。これは…」
「あそこは、騒がしいし
落ち着いて食事が出来なさそうだったからな。
ここに運んでくれないかと、交渉してた。
だが、離れない方が良かったな」