第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
「その、君の可愛らしい口の
開き方では、ぶどうが入らないが?
もう少し…、大きく、口を開くといい」
「…んっ、…こう…ですか?」
促されるままにぶどうがギリギリに
入る位に口を開くと
ぶどうの粒が口の中に入って来て
もう 口にぶどうが入ってるのに
小野寺の唇に触れる 杏寿郎の
指先が まだ 離れて無くて
つつ…と ほんの数センチだけ
その指が小野寺の下の唇を撫でて
「美味いか?ぶどう」
「はい、美味しい…です」
満足そうに杏寿郎が微笑んで
「もっと、食べるか?」
その問いかけに 頷くと
ニコッと目の前のその人が笑顔になって
「小野寺。
君は素直で可愛らしいな。
可愛い君には、もっと、ぶどうを
沢山食べさせてやろう」
そう言って新しいぶどうを
手に取ると
同じ様に食べさせられてしまって
一粒 また 一粒と
与えらえる度に
自分が 親鳥からエサを強請る
雛鳥にでもなったかの様な
そんな錯覚に 溺れる
でも…気のせい…じゃない気がする
ぶどうを食べさせた時に降れる
その指先が ほんの僅かに
初めは触れていただけだったのに
「俺も…、食べたいんだが?」
今度は自分にもぶどうを
食べさせて欲しいと強請られてしまって
カゴの中にある ぶどうを
小野寺が房からひとつもぎ取ると
口を開けて待っている
彼の口にその粒を押し込んだ
ギュッとその手の手首を
掴まれてしまって
ちゅ…と指先にキスを落とされる
思わず 身体を後ろに引いてしまったが
手首を掴まれているので
手はそのままで
ふっと杏寿郎が笑顔になると
「俺の可愛い、妻は。
どうにも、初々しいな…。
何、安心するといい。まだ夫婦の
儀式が済んでないからな…、
今はそうはしない…」
掴まれたままの手首はそのままで
そう耳元で 信じられない位に
色気をはらんだ声で囁かれて
思わず 瞼を閉じて身構えてしまう
スッと手首を開放されてしまって
自由が戻って来る
「夫婦になる日が、待ち遠しいな!」
そういつものあの大きな声で
言って にこっと笑うその顔は
いつもの杏寿郎だったのだが
発言の内容を
脳内で噛みしめると
カアっと小野寺の顔が
真っ赤に染まってしまっていて
リンゴの様だと笑われてしまった